九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第27回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
会議情報

Duchenne跛行に対する運動療法
骨盤・体幹機能に着目した展開
*松田 憲亮
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 102

詳細
抄録
【はじめに】 股関節機能障害を,全身的運動表現である歩容の視点から観察するとヒトの直立ニ足歩行時、その体平衡は下肢帯の運動を体幹が吸収・代償することにより調整・維持されている.変形性股関節症の異常歩行の1つ,Duchenne跛行も単独の外転筋の筋力弱化による歩行とは考えにくい.
今回,我々は全身的運動系の見地から骨盤・体幹機能に焦点を当てた運動療法を実施し,若干の歩容の改善がみられたので報告する.
【症例紹介】 33歳,女性,右末期関節症.平成15年9月,大腿骨外反骨切り術,ハムストリングスリリ-ス併用のキアリ骨盤骨切り術施行.レントゲン所見では骨頭形態は扁平で術後4週,関節裂隙の開大を認める.sharp角38度,AHI 83%で関節の適合性は良好である.
【理学療法評価:全荷重歩行4週】
当院では術後の外転筋力の到達目標を1.0-1.1Nm/kgとして筋力増強運動をおこなっている.全荷重歩行4週での外転筋力は求心性収縮0.88Nm/kg,遠心性収縮0.81Nm/kgで筋力低下を認めた.立位姿勢では,立脚側骨盤挙上し,股関節は軽度屈曲,外旋位をとっている.歩容は,骨盤前傾位で,術側立脚中期は骨盤傾斜と体幹傾斜の位相は逆位相である.立脚初期から中期での骨盤運動及び股関節伸展・内旋運動は乏しく,骨盤挙上・後方回旋し,股関節伸展・内転方向の運動を強めている.10mスピ-ド11秒である.
【理学療法アプロ-チ】
適度な関節圧縮を持続させることによる外転筋の筋活動と下部体幹の筋活動を高める目的として,1.背臥位・腹臥位での術側骨盤下制運動 2.術側下側臥位での対側骨盤挙上運動を実施.
立位での股関節外転筋の伸張刺激を利用して遠心性収縮と求心性収縮の筋活動を高める目的として,1.対側の骨盤挙上・術側骨盤下制運動を実施.同様に立位にて,骨盤中間位での中殿筋の活動を高める目的として,2.後段動作にて踵接地-立脚中期での骨盤後傾-前傾運動を促し,大殿筋と腹筋群の協調性運動を実施.
【理学療法評価:全荷重歩行10週】
全荷重歩行10週での外転筋力は求心性収縮1.15Nm/kg,遠心性収縮は1.12Nm/kgで筋力増加を認めた.歩容は,骨盤の前傾位は改善され,術側立脚中期は骨盤傾斜と体幹傾斜の逆位相は改善された.10mスピ-ド9秒となった.
【結語】
 今回,歩行の骨盤・体幹機能に注目し,アプロ-チを実施,中殿筋の活動性を高める運動療法を展開した.今後の課題として,骨盤帯・股関節安定性メカニズム解明,運動療法の効果検証を多くの症例数に対して検討して行きたい.
著者関連情報
© 2005 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top