九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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正常歩行と体幹回旋を行わない歩行の違いと理学療法での有用性
*城戸 栄一郎
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p. 107

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抄録
【はじめに】
歩行とは関節の可動性、選別された筋肉の動きそして固有感覚の織りなす協調運動であるとされている。臨床場面において患者様の歩行観察をおこなうと体幹の回旋が著明に低下している歩容を目にする。また、健常である高齢者や幼児の歩容も体幹回旋が殆どない動作を行っていることが多い。さらに、近年様々なスポーツ界においても体幹を回旋させないなんば歩行の動きが注目され取り入れられている。どのような利点が得られるのか疑問に思い、体幹回旋を制限したなんば歩行と正常歩行を比較検討し理学療法を行う上での有用性を若干の考察を加え報告する。
【対象と方法】
対象は健常成人男性9名(20歳_から_29歳、平均年齢21.4歳)。方法は被検者の頭部、骨盤にマーキングし三次元動作解析装置にて計測。最初に正常歩行4m、その後なんば歩行4mを行い重心移動を比較する。
【結果】
なんば歩行と正常歩行を比較した結果、全ての被検者において正常歩行では重心点が平行した緩やかな曲線を描いた。なんば歩行では頭部、骨盤の重心移動が大きく、特に頭部の重心点が骨盤の重心点に接近し離れるという曲線が認められた。
【考察及びまとめ】
小田らは正常歩行を中心軸歩行、なんば歩行(常歩)を二軸歩行としている。これは分析した結果と一致している。なんば歩行が動作を行う上では効率の良い歩行であるのに対し、正常歩行は頭部をできるだけ動かさないことで認知器官の照準をよりよく合わせることができ、認知に関するより高い成果が得られる歩行と考えられる。
しかし、身体能力が低下している患者様が歩行動作を行う時、その意識の大半は自身の生体に向けられており動作を優先した体幹回旋がない歩行を行っていると考えられる。そのような患者様に対しては、安定性・安全性を優先した歩行から始め、能力の改善とともに認知器官を主体とした正常歩行をアプローチしていくのも一つの手段と考える。
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© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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