抄録
【はじめに】
今回、当院にて手指の変形性PIP関節症による関節軟骨の破壊、それに伴う疼痛に対し、徐痛、可動域の改善、変形の矯正を目的に、人工関節置換術と早期運動療法を施行した。短期的ではあるが、治療成績を報告する。
【対象と方法】
対象は2005年7月から2006年4月にかけ、当院にてPIP関節、人工関節置換術を施行した5例6指(男性1例、女性5例)であり、4例は特発性、1例が外傷後関節症であった。内訳は、示指1例、中指2例、環指3例であった。人工関節は、全例にAVANTA SR ハンドインプラントシステムを用い、骨セメントを使用した。また、Heberden結節による疼痛の高度であった2指にDIP関節固定術を追加して行った。手術時年齢は、52から62歳(平均56歳)であった。
これらの症例に対し、術前・術後の手指自動関節可動域、疼痛・術後ADLについて検討した。
【術式】
4例には背側アプローチ、骨接合術の再手術である1例に、掌側アプローチを行った。
【術後療法】
突発性の4例は術後1週より、術前関節拘縮が高度であった、外傷後の1例は術翌日より、PIP関節の自・他動運動を開始した。再拘縮、腱癒着を防ぐため積極的な腱滑走運動によるグライディングの促進と可動域運動を進めた。他動運動では過屈曲によるExtension lagを防止する為、PIP関節屈曲は段階的に進めた。
【結果】
可動域は、術前PIP関節伸展-10°から-65°(平均-22°)、屈曲45°から95°(平均59°)から、術後3ヶ月経過時、PIP関節伸展-40°から0°(平均-18.7°)、屈曲45°から100°(平均77.5°)であった。疼痛は全例において改善が認められ、日常生活においても、負荷量の調整が必要であるものの、術前の仕事あるいは家庭復帰が可能となった。また、症例の多くは女性であり、美容的観点においても、変形の矯正が得られたことにより、満足度は高かった。
【考察】
今回、手指の関節軟骨の破壊、それに伴う疼痛・ADL制限に対し、人工関節置換術を施行し、術後早期運動を行うことにより、短期的ではあるが、良好な成績を得ることができた。また、美容的観点においても、変形の矯正が得られたことより、満足度は高かった。人工関節の課題として、長期使用におけるインプラントの破損やルーズニングが考えられるため、長期成績についても検討していきたいと考えている。