九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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病院内車椅子移動動作における評価の検討
*久保 拓哉渕 雅子
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キーワード: 車椅子移動, 評価, 移動能力
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p. 41

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抄録


【はじめに】
移動能力の獲得はその後のADL動作獲得においても重要な役割を果たすと考える。その中でも車椅子による移動は入院初期より用いられやすく、かつ歩行未獲得の場合は最終的な移動手段としても多く使用されるため、その効率的な動作獲得は重要であると考える。また車椅子移動に関しては一連の動作にて様々な動作項目や背景要因から成り立っているが、その詳細な評価は少ない。今回、当院入院中の脳血管障害患者(以下、CVA患者)を対象とし、リハビリテーション室(以下、リハビリ室)から病室までの移動区間を動作別に分類し、担当セラピストによる評価の実施・集計を行い、車椅子移動動作について若干の考察を加えたので報告する。
【対象】
対象は当院入院中のCVA患者で、移動に車椅子を使用する者50名。内訳は脳出血21名、脳梗塞29名、平均年齢69.6±11.6歳、男性25名・女性25名、左片麻痺19名・右片麻痺23名・両麻痺8名である。
【方法】
当院におけるリハビリ室から病室までの車椅子移動動作を1)リハビリ室内の車椅子駆動、2)エレベータ(以下、EV)操作、3)病棟内駆動、4)病室内移動、5)ベッドへの設置、6)車椅子(ブレーキ・フットレスト)操作、7)移乗動作、8)ベッド上端座位、9)靴の着脱動作、10)基本動作の10項目に分類し、対象の各項目の能力を担当作業療法士が自立、監視、介助の3段階にて評価したものを集計した。さらに各評価を自立:0点、監視:1点、介助:2点と配点し、各項目別に全対象の合計点数を算出した。各項目における合計得点については全対象者が介助の場合、計100点となる。
【結果】
10項目中最も高い数値を示したのは2)エレベータ操作:75点であった。次に1)リハビリ室内の車椅子駆動:66点、3)病棟内駆動:57点、5)ベッドへの設置:53点の順となった。4)病室内移動、6)車椅子操作、7)移乗動作はそれぞれ51点であった。以下、10)基本動作:41点、9)靴の着脱動作:40点、8)ベッド上端座位:31点であった。
【考察】
今回の結果より、院内車椅子移動において難易度が高い動作は2)EV操作が示唆された。これはEV操作が狭い空間での車椅子駆動や機械操作など複数の能力を必要とするためと考えられる。次に1)リハビリ室内・3)病室内の駆動が挙げられるが、2項目間において点数の差がみられた背景としては、病棟内が慣れ親しんだ・限定された環境であるのに対し、リハビリ室内は空間的にも広く、また多くの人の往来といった不定期な環境であることが影響したと考えられる。今回、院内車椅子移動を考えても、その動作を細かく分類・評価することにより項目間の点数の差がみられ、項目別による難易度の差が示唆された。車椅子駆動による自立を図るためには、セラピストのより詳細な評価と段階付けた治療介入・ゴール設定を行っていく必要があると考える。

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© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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