九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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膝前十字靱帯再建術後の理学療法に対する一考察
しゃがみ動作を視点として
*城内 若菜木藤 伸宏本山 達男川嶌 眞人
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p. 47

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抄録

【はじめに】
膝前十字靱帯(以下ACL)再建術後患者の理学療法として、膝可動域・筋力回復が主として着目されている。しかし、ACL機能不全の状態で日常生活を送ることで、姿勢・動作への影響も無視できないと感じる。今回、2年間ACL機能不全の状態で日常生活を送った後、再建術に至った症例を担当する機会を得た。本症例の術前の姿勢・動作から今後の再建靱帯に対する負担を力学的視点より推察し、理学療法を展開する必要があると考えた。特に脛骨前方引き出しによる再建靭帯の負担を考慮するため、矢状面のアライメントに着目した。矢状面での重心移動に対する運動戦略を分析するため、しゃがみ動作を臨床指標とし理学療法を行った結果、姿勢・動作に改善が認められたためここに報告する。
【症例紹介】
43歳、男性。診断名は左ACL損傷、左内側半月板損傷、左外側半月板損傷。現病歴は、平成15年6月に野球中に捕球のためジャンプを行い、着地時に受傷。ACL損傷、外側半月板損傷と診断され、保護的早期運動療法開始。3ヵ月後、膝関節鏡実施。結果、修復ACLの大腿部付着部が後十字靱帯に付着し、機能不全が生じていた。術中、外側半月板部分切除術も実施。その後、特に支障なく日常生活動作を行っていたが、月に1、2回の頻度でgiving wayが生じ、また本人がスポーツ復帰を希望していることより、平成18年2月4日、膝蓋靱帯による左ACL再建術施行。術中、内側半月板に横断裂がみられ、内側半月板部分切除術を同時に実施。
【術前評価】
疼痛はgiving way後に左膝内側に出現。KT-1000での徒手最大左右差は13mm。膝関節可動域は、屈曲150°、伸展0°。立位姿勢は、骨盤後傾・左回旋。左側大転子が左外果より後方にあり、膝伸展モーメント優位の姿勢。しゃがみ動作では、動作開始初期より骨盤後傾・左回旋が起こり、股関節屈曲が生じ難く、上半身重心の前方移動が少ない状態であった。このことで、膝関節伸展モーメントが増大すると推察した。
【理学療法アプローチ】
(1)膝関節可動域・筋機能訓練(2)股関節、体幹可動性・筋機能訓練(3)坐位での骨盤前後傾、側方移動(4)坐位での股関節自動屈曲(5)片脚立位(6)立位での重心前後・左右移動 上記の治療を臥位、坐位、立位と段階的に実施した。
【結果】
術後3週目の結果を示す。疼痛はなく、膝関節可動域は、屈曲140°、伸展0°。立位姿勢は、骨盤中間位保持が可能となった。左側大転子は左外果より前方に位置し、膝屈曲モーメントが増加する姿勢へと変化した。しゃがみ動作では、骨盤中間位を保持した状態での股関節屈曲が増加し、上半身重心の前方移動が可能となった。よって、視覚的にはしゃがみこみ動作時の膝伸展モーメントは術前に比し、減少した。
本症例に対する理学療法の妥当性について、考察を加え報告する。
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© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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