九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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半月板損傷に対するアプローチの一考察
振り向き動作異常に着目して
*徳田 一貫永津 義竜木藤 伸宏本山 達男川嶌 眞人
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p. 48

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抄録


【はじめに】
半月板術後の理学療法として、大腿四頭筋運動や膝関節可動域の改善に焦点を向けられる事が多い。しかし、日々の臨床の中で膝関節機能の向上と伴に膝関節に対する力学的ストレスについて原因追求し治療する必要があると考える。今回、右膝内側半月板損傷後、関節鏡による半月板切除術を行った症例に対し、日常生活での異常姿勢・動作に着目し、立位姿勢・振り向き動作を臨床指標として反対側股関節機能や体幹機能にも着目して治療した。その結果、姿勢・動作に改善が見られ、疼痛軽減に繋がったので以下に報告する。
【症例紹介】
54歳男性、身長 168cm、体重 71kg、BMI 25。診断名:右膝内側半月損傷、X線所見:FTA175°骨硬化・骨棘形成なし、MRI所見:内側半月中後節に水平断裂あり。職業:調理師で12時間労働、立位で左回旋動作が多い。
【術前評価】
関節可動域検査(右/左):膝屈曲140°/155°伸展0°/ 0°股内旋30°/35°体幹回旋制限(右<左)、疼痛は、歩行時Visual Analog Scale(以下 VAS)4/10、右膝屈曲時(VAS 10/10)、立位左回旋動作時(VAS 10/10)に膝内側痛出現。筋機能検査は、両側股周囲筋群筋機能低下(右<左)あり。立位姿勢は、上半身重心右前方変位、上部体幹右側屈・右回旋、胸椎後彎、骨盤後傾(右<左)・左回旋、右股外旋・下腿内旋・膝内反姿勢。立位左回旋動作は、上述の立位姿勢で開始し、骨盤は左側方移動、右股内転・内旋不十分で、上半身重心を右前方の位置に残し、右膝内側を軸に右股外旋・下腿内旋位の状態で回旋動作を行う。
【理学療法アプローチ】
1.両側中殿筋・腸腰筋・股内転筋群機能改善運動 2.胸椎伸展運動 3.体幹回旋運動 4.骨盤中間位保持運動 5.立位骨盤側方移動運動を膝筋機能改善運動とともに、上述の臨床指標に着目し段階に応じて治療を施行した。
【臨床推論および結果】
本症例の術前の左回旋動作は、体幹-骨盤のアライメント異常により、上半身重心が右前方の位置にあり、上半身重心の左側移動が不十分な状態で動作を行う。また、左股関節筋機能低下により、骨盤-股関節での安定性が低下し、骨盤の左側移動が不十分である。これらの原因により、上半身重心を右膝内側の位置に残した状態で、右股外旋-下腿内旋位で立位回旋動作を行う。仕事上この異常動作を繰り返す事により、右膝内側に圧縮回旋ストレスが生じ疼痛が出現したと推察した。この動作を改善するため、臨床指標として、立位姿勢、立位回旋動作に着目し上述のアプローチを行った。その結果、動作の改善がみられ疼痛が消失した。
【まとめ】
日常生活の姿勢・動作より膝関節の力学的ストレスについて考え、膝関節機能だけでなく全身に着目し、理学療法評価、治療に繋げていく事が重要である。

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© 2006 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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