九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 149
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吹矢練習は呼吸機能にどのような影響を与えるか?
*永崎 孝之山本 広伸福留 英明岡田 裕隆甲斐 悟高橋 精一郎
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抄録
【はじめに】
 筆者らは吹矢練習が呼吸機能に及ぼす影響について本学会で報告してきた。しかし分析の範囲は狭く不十分であった。そこで今回分析項目を増やし、吹矢練習が呼吸機能に与える影響を検討したので、考察を加えて報告する。
【対象】
 対象者は本研究の説明を十分に行い、同意を得た健常者10名(男性5名、女性5名)、平均年齢19.2±1.81歳である。
【方法】
 吹矢練習は5m離れた標的へ、5分間に10本の割合で、15分間計30本の矢を吹かせた。これを1日2回、週4日間(連続した)、4週間実施した。チェスト社製スパイロメーターHI-801を用い、肺活量、努力性肺活量、1秒量、1秒率、ピークフロー(PEF)、肺活量の70、50、25%肺気量位での最大流速、呼気最大口腔内圧(PEmax)、吸気最大口腔内圧を測定した。測定は、吹矢実施前と1週後、2週後、3週後、4週後に各3回測定し、最高値を測定値とした。統計処理はSPSS13.0Jを用いてFriedman検定を行い、有意差が認められた場合にBonferroniの不等式による修正を用い多重比較を行なった。いずれも有意水準は5%未満とした。
【結果】
 4週間の吹矢練習により、PEFおよびPEmaxに有意な増加がみられた。それ以外の呼吸機能について有意差は認められなかった。多重比較では、PEFは実施前と2週、3週、4週、PEmaxは実施前と4週の各群間で有意差が認められた。
【考察】
 吹矢練習がPEFに影響を与えることは本学会ですでに報告したが、今回も同様の結果となった。吹矢は矢を一瞬のうちに吹き出さなければならず、どれだけ速く呼気を出せるかが重要である。この特性がPEFを増加させたと考える。さらに今回は呼吸筋力の指標とされるPEmaxも変化した。前回報告と合わせて、呼吸筋訓練器としての可能性が高まった。吹矢の場合、運動の負荷量は、矢の重さや標的までの距離、回数などに依存する。今回はそれぞれ2週目、4週目から変化が見られたが、負荷量によっては変化する時期が異なることも予想され、適切な負荷量の設定が必要であり検討を要する。 今回の結果で、吹矢練習がPEF、PEmaxの改善に寄与する可能性が広がった。しかし、1)健常者での検討であること、2)負荷量設定の検討が必要なこと、3)呼吸理学療法の現行方法との比較を行っていないこと、等解決すべき課題があり今後検討が必要である。
【おわりに】
 健常者10名を対象に、吹矢練習が呼吸機能に及ぼす影響についてスパイロメーターを用いて検討を行なった。結果、PEFおよびPEmaxに有意差な増加を認め、PEFは実施後2週より、PEmaxは実施後4週より増加がみられた。今後さらに研究の精度を上げ、理学療法への応用を探って行きたい。
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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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