九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 030
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姿勢変化と呼吸機能の関係
*清水 友美子岡村 美穂子川俣 幹雄森下 志子前本 英樹平野 浩二
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キーワード: 円背, 呼吸機能, 咳嗽力
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抄録

【はじめに】
 臨床において、ギャッジアップ座位時の崩れた姿勢はよく見かける場面である。このような姿勢の継続は、脊柱の屈曲増加、肺活量や咳嗽力低下などさまざまな影響を及ぼすと報告されており、実際、崩れた姿勢のままムセた場合の喀出力低下を危惧される。そこで今回、崩れた姿勢による体幹屈曲姿勢を円背と仮定し、円背指数を用いて、円背角度の変化により肺機能にどのような影響を及ぼすのかフローボリューム曲線を用いて比較・検討を行った。
【対象】
 本研究に同意した脊柱に著明な変形を有さず、呼吸器疾患の既往のない健常人17名。内訳は男性10名、女性7名。平均年齢は23.8±2.8歳。
【方法】
 測定条件は、体幹固定装具を用い、安静位と3つの円背角度の4条件で比較した。円背指数は、軽度後彎(円背指数5)、中等度後彎(円背指数15)、重度後彎(円背指数25)を設定した。円背指数は、第7頚椎棘突起と第4腰椎棘突起を結んだ線をL、Lから彎曲の頂点までの距離をHとし、H/L×100として算出した。各条件下を立位にて実施し、安静位においては自然肢位とし、円背においては骨盤後傾位、股関節及び膝関節屈曲位で行い、全ての条件下において顎は引いた状態で行った。呼吸機能はスパイロメーターを使用し、FVC(努力性肺活量)、FEV1.0(1秒量)、FEV1.0%(1秒率)、PEFR(ピークフロー)を測定した。統計処理には多重比較検定を用い危険率5%未満を有意とした。
【結果】
 FVC、PEFRにおいて、安静位に比べ円背角度を変化させた全ての条件下で有意に減少した(p<0.05)。FEV1.0、FEV1.0%において有意差はなかった。円背群間で比較したPEFRにおいて、軽度後彎と重度後彎のみ有意に減少した(p<0.05)。円背が重度になるにつれFVC、PEFRが低下傾向を示した。
【考察】
 円背姿勢により呼気筋出力低下等の要因が起こり、円背群では全ての条件下においてPEFRが有意に減少した。また、円背が重度になるにつれFVC、PEFRが低下する傾向が示された。このことから、臨床で見られるギャッジアップ座位時の崩れた姿勢や円背を有する高齢者がムセなどを起こした場合、喀出力低下を招く恐れがあると考えられる。今後、高齢者の咳嗽力低下に対し円背姿勢予防・改善とともに呼吸機能向上を視野に入れ、どのようにアプローチするのか検討していきたい。
【まとめ】
1.姿勢変化が呼吸機能に与える影響について、円背角度の変化によりどの程度影響を及ぼすのか比較・検討した。
2.安静位と比較した各条件下全てにおいてFVC、PEFRが有意に減少した。
3.円背が重度になるにつれFVC、PEFRが低下傾向を示した。
4.円背群では、姿勢改善、呼気筋出力向上に努めることが大切と思われた。

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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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