九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 031
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半月板損傷患者の痛みに対する一考察
~機能解剖学的視点からのアプローチ~
*山崎  博喜古田 幸一
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キーワード: 半月板損傷, 機能解剖, 疼痛
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抄録

【はじめに】
 半月板損傷は一般的に損傷の部位、程度、形態などの違いにより保存療法、縫合術、切除術などが選択される。今回受傷機転が明確でない半月板損傷患者の保存的治療に対して、機能解剖学視点から疼痛の軽減、関節可動域改善を目的とした理学療法アプローチを行った。
【症例紹介】
 54歳女性、身長158cm、体重62kg、BMI:24.0(普通) X線所見FTA 175° 診断名:右内側半月板(以下MM)損傷 MRI所見 MM後角損傷 平成11年の交通事故で右膝に違和感出現、その後昨年8月より疼痛増強の為、当院受診し理学療法開始となる。
【経過及び考察】
 理学療法開始時はMM損傷により関節水腫がみられ、疼痛や膝関節可動域制限が出現した。関節水腫が貯留することで、関節包は柔軟性を失い、関節軟骨の二次的障害の原因となる。そこで、関節包の柔軟性向上や関節軟骨保護の目的で、関節水腫と滑液をシェイクするように大腿脛骨関節(以下FT関節)のmobilizationや膝蓋上包リリースを施行した。2週間後、関節水腫はほぼ吸収され、動作時痛の程度もVAS8/10からVAS5/10と軽減し、膝関節屈曲125°と改善した。しかし、膝屈曲最終域での疼痛が腓腹筋内側頭と膝窩部、また圧痛が大腿二頭筋短頭、ヒラメ筋に残存した。腓腹筋内側頭周辺には幾つかの滑液包が存在し、滑液包炎が起り易い。また内側頭は外側頭と比較して筋腹が厚く、筋長が長い。さらに膝屈曲時FT関節の内側関節面接点は外側関節面接点より前方にある為大腿骨内側後方に間隙ができ、腓腹筋内側頭や関節包は挟まれやすい。治療は、screw-home movementを誘導する為、足関節内反位でのquarter squatを行った。その後roll backを考慮して、膝窩部にタオルを挟み、ROM-exで最終可動域を目指した。しかし、膝窩部の痛みは残存したことから疼痛部位を再考し、膝窩筋に着目した。膝窩筋は半膜様筋、ヒラメ筋や大腿二頭筋短頭と筋連結がある。MMは、形態的に運動性が乏しく、筋に依存した運動が必要となり、筋スパズムの影響を受け易い。国中によれば、膝窩筋は筋走行から初期屈曲域と最大屈曲域で伸張されたとしていることからも、症例の疼痛は膝窩筋の伸張痛と推測した。その為膝窩筋が伸張される初期と最終屈曲域での低負荷等尺性下腿内旋運動を施行した。最終評価時、日常生活の痛みはVAS2/10、膝屈曲可動域140°と改善された。
【まとめ】
 機能解剖学的視点で評価・治療を行い疼痛軽減、ROM改善が図れた。しかし、MM損傷起因と考えられる疼痛は残存しており、今後二次的障害を引き起こさない様、継続的に追跡し、理学療法の効果検証を試みたい。

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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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