九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 037
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大腿骨頸部外側骨折術後、術側下肢のアライメント不良を呈する症例に対するアプローチの考察
*山浦 誠也田中 創矢野 雅直本村 優季森澤 佳三(MD)副島 義久(MD)
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抄録
【はじめに】
 臨床において股関節術後に下肢機能軸の偏位を認める症例が多々見受けられる。この状態で荷重・歩行訓練を進行していくと様々な部位に二次的な障害を招いてしまう恐れがある。今回、股関節術後に術側下肢のアライメント不良を呈する症例を経験し、その原因追求と不良アライメントの改善に重点をおき理学療法を試みたので以下に報告する。
【症例呈示】
 84歳、女性。
診断名:左大腿骨頚部外側骨折(γネイル施行)
 安静臥位における術後左下肢アライメントは股関節軽度屈曲‐過内旋、膝関節軽度屈曲‐外反、大腿骨に対する相対的な下腿の外旋を認め、距骨下関節は過度の回外位を呈していた。
【訓練内容】
 a腹筋群、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯、外側広筋、内転筋群、腓骨筋群のバランス調整b股関節外旋可動域の拡大と外旋筋収縮訓練c距骨下関節回内可動域の拡大
 上記a~cを荷重・歩行訓練を施行する前に実施。また、b,cにおいては自主訓練の指導を行った。
【結果】
 安静臥位における左下肢アライメントは股関節の過度な内旋、膝関節の屈曲・外反、大腿骨に対する相対的な外旋、距骨下関節の過度な回外が改善された。
【考察】
 当院におけるγネイル施行の際、術中肢位はベッド上仰臥位であり整復位を確保する為股関節内旋位、足部は固定され距骨下関節は回外位を強いられる。本症例が呈する下肢の不良アライメントは上記した術中の下肢アライメントと類似する事から術中肢位の関与が示唆された。また、徒手的に大腿骨を外旋方向、距骨下関節を回内方向へ操作することにより下肢アライメントの改善が観察されることから股関節外旋・距骨下関節回内を促すような訓練を重点的に行った。
 距骨下関節回内、股関節外旋は歩行時の踵接地において重要な役割を担っており両者の運動制限はロッカー機構、膝関節中心靭帯安定化機構の破綻をきたしてしまい様々な部位へ二次的な障害を惹起する事が考えられる。
 今回の症例より股関節術後の術側下肢のアライメント不良はその要因の一つに術中肢位が挙げられ治療を行った結果改善することができた。股関節術後二次的な障害の発現を防ぐためにも術側下肢の不良アライメントの改善は重要視すべき点ではないかと考えられる。
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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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