主催: 社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 , 社団法人 日本作業療法士会 九州各県士会, 主管 社団法人 鹿児島県理学療法士会, 主管 鹿児島県作業療法士会
【はじめに】
最小侵襲手術(MIS)は組織損傷、術後疼痛を軽減するだけでなく術後の機能回復、小切開による整容面での改善をもたらすと言われている。当院でも2004年11月よりMIS-TKAが導入された。今回MIS-TKAとstandard TKAの術後経過の比較検討を行ったので報告する。
【対象】
2004年11月~2007年1月の間に当院で施行されたTKAのうち、術前から術後3週にかけての定期評価が可能であったMIS-TKA(以下MIS群)20例23膝とstandard TKA(以下standard群)24例30膝を対象とした。疾患はすべて変形性膝関節症で全例女性であった。平均年齢MIS群76.6歳、standard群74.8歳、術前JOAスコアMIS群51、standard群52.3、術前ROMの平均はMIS群屈曲123°伸展-6.5°、standard群屈曲122°伸展-8.8°で両群に有意差はなかった。平均の皮切長はMIS群8.8cm、standard群13.8cmであった。
【方法】
術前と、術後1週目、2週目、3週目に膝関節伸展および屈曲の等尺性筋力を測定し、体重比(%)を算出した。同様に疼痛の評価を術前から術後1週毎にVisual analog scale(VAS)にて行った。ROMは術前と退院時の可動域をそれぞれ測定し、手術から膝関節屈曲90°及び120°獲得に要した日数を記録した。歩行能力は一本杖歩行獲得に要した術後日数を記録した。以上の項目を、対応のないt検定を用いて両群を比較した。
【結果】
筋力は伸展、屈曲ともに平均値でMIS群がstandard群を上回り、特に術後1週目(P<0.01)及び2週目(P<0.05)の伸展および屈曲筋力で有意差が認められた。VASではMIS群の術後平均値はいずれもstandard群よりも下回り、術後1週目(P<0.05)で有意差が認められた。一本杖歩行獲得(P<0.005)もMIS群で有意に早かった。ROMは退院時ROMの平均はMIS群屈曲123°伸展-3°、standard群屈曲119°伸展-3.2°で両群間に有意差はなかったが、90°屈曲獲得(P<0.01)、120°屈曲獲得(P<0.01)日数ではMIS群が有意に早かった。退院時に120°を獲得した割合はMIS群で69.6%、standard群で66.7%であった。
【考察】
MIS-TKAではstandard TKAに比して術後早期からの筋力回復と可動域の改善が得られた。さらに、疼痛が軽度であったため早期に一本杖歩行を獲得したと考える。MIS-TKAは皮切長の短縮による組織損傷の軽減と膝伸展機構の温存により、疼痛の軽減、術後早期からの機能回復を可能にしたと推察される。今回、術後早期からの比較検討を行ったが、今後は退院後も含めた調査と長期的機能予後の検証を行いたい。