九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 144
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自動運動を伴う部分浴の深部温熱効果について
*大重 匡小村 直人鄭 忠和
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キーワード: 部分浴, 運動, 深部体温
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抄録
【目的】
 物理療法の一つである水治療法は温水の伝導を利用した表在熱による治療であり、部分浴は水治療法のひとつで、温水で身体の一部を加温する治療である。部分浴の温熱は熱伝導作用と皮膚表面の温められた血液の循環作用を示すことになるが、皮膚表面の温められた血液の循環作用についての報告はなく、さらに部分浴中の自動運動が深部体温にどのような影響を持つかについての報告もない。そこで今回は、温水の表在熱が身体に与える影響について、前腕浴中に手関節屈伸の自動運動を行わせたときの身体反応について検討し、部分浴の新知見を得たので報告する。
【対象】
 対象は、健常若年男性7名(平均年齢20.8±0.4歳)である。( mean±SD)
【方法】
 部分浴の方法は、椅子座位で充分な安静後に41℃の単純泉に右前腕部の部分浴(前腕浴)を20分間行い、日を変えて右手指の屈伸の自動運動を伴う右前腕の部分浴(自動運動を伴う前腕浴)を20分行った。右手指の屈伸はメトロノームを用いて60回/分のリズムで行った。測定項目は、脈拍数、血圧、右上腕の皮膚血流量、舌下温(深部温)、表在温(額、頚部、左上腕、腹部、左大腿、左足背)、主観的温感強度である。統計処理は前腕浴と自動運動を伴う前腕浴の比較をノンパラメトリック検定(対応のあるWilocxon検定)で行った。
【結果】
 脈拍では、前腕浴で9.7±3.9回/分、自動運動を伴う前腕浴で11.1±6.5回/分増加し有意差は認めなかった。収縮期血圧の変化は、前腕浴で1.4±3.8mmHg低下したが、自動運動を伴う前腕浴では5.9±6.9mmHg上昇し危険率5%で有意差を認めた。拡張期血圧は有意差を認めなかった。皮膚血流量は前腕浴で安静時の1.5倍、自動運動を伴う前腕浴で2.6倍となり、有意差(p<.05)を認めた。深部体温は、前腕浴で0.19℃、自動運動を伴う前腕浴で0.49℃と上昇し有意差(p<.01)を認めた。表在温では、いずれの部位においても前腕浴と自動運動を伴う前腕浴の比較で有意な差を認めなかった。温感は、両方法ともちょうどよい温感であった。
【考察】
 自動運動を伴う前腕浴では、自動運動を行わせたため、交感神経が優位となり、脈拍数で約10回/分増加や収縮期血圧約6mmHg上昇したが、身体に対する負担は軽かったと考える。それに対し、今回の自動運動を伴う前腕浴の深部体温への効果は約0.5℃上昇した。このことは、鄭が奨励するサウナ浴での、深部体温1℃の上昇には及ばないが、41℃の前腕浴にしては大きな変化が見られたと考える。
【まとめ】
 健常若年男性に対して、表在温である部分浴の前腕浴と手関節の自動運動を伴う前腕浴を行い、その比較をした。その結果、自動運動を伴う前腕浴が前腕浴より有意に上腕部の皮膚血流量を増加させ、深部体温では有意に0.5℃上昇した。
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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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