九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 145
会議情報

虚弱高齢者における足関節ストラテジでのFunctional Reach Testに関する検討
~関節可動域、下肢筋力、足底感覚との関連性~
*藤元 志帆平瀬 達哉坂井 孝行塩塚 順栗田 健介萬木 信人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】
 Functional Reach Test(FRT)に影響を及ぼす因子は多数報告されているが、リーチ動作及びバランス能力に関連すると考えられる関節可動域、下肢筋力、足底感覚との関連を報告した研究は少ない。またFRTには股関節、足関節、踵上げストラテジが存在すると報告されており、ストラテジの違いによってリーチ距離へ影響を及ぼすことも考えられる。本研究の目的は、虚弱高齢者における足関節ストラテジでのリーチ距離と関節可動域・下肢筋力・足底感覚との関連性について検討することである。
【対象と方法】
 対象は、通所施設を利用されている高齢者18名であり、平均年齢は81.2±4.1歳である。対象者の内訳は、男性2名、女性16名であり、介護度は、要支援1:10名、要支援2:2名、要介護1:5名、要介護2:1名である。測定項目は、リーチ距離、関節可動域、下肢筋力、足庭感覚とした。FRTは、裸足にて行い、両側踵部中心間距離が15cm、踵部中心と第2趾先端を結ぶ線が垂直位となるようにし、両上肢90度屈曲位から最大限前方へリーチさせ測定した。測定時ストラテジの条件として、股関節をなるべく中間位に保持させ、踵を浮かせず足背屈のみ許すようにした(足関節FRT)。測定は2回行い、最大値をリーチ距離とした。関節可動域は、角度計を用いて肩甲骨屈曲、体幹屈曲、足関節背屈、底屈の角度を測定した。下肢筋力は、日本メディックス社製Micro FET2を用いて利き足の股屈筋、膝伸筋、膝屈筋、足背屈筋、足底屈筋をブレーク法にて2回測定し、最高値を筋力とした。足底感覚は、二点識別覚を評価し、ノギスを用いて利き足を測定した。測定部位は、踵部と母指球部の二つとして、その平均値を評価した。統計処理については、リーチ距離と関節可動域、下肢筋力、足底感覚との関連性についてPearsonの相関係数を用いて検討し、危険率は5%未満とした。
【結果】
 リーチ距離と関節可動域及び足底感覚の二点識別覚との関連性については、全てにおいて相関を認めなかった。リーチ距離と下肢筋力との関連性については、股屈筋(r=0.571、p<0.05)、膝屈筋(r=0.577、p<0.05)とそれぞれ有意な正の相関を認め、膝伸筋、足背屈筋、足底屈筋とは相関を認めなかった。
【考察】
 今回の結果より、足関節FRTでのリーチ距離と関節可動域、足底感覚とは関連性が認められず、下肢筋力の股屈筋、膝屈筋との間に関連性が認められた。股屈筋については、足関節FRTによる姿勢保持の影響が大きいことが考えられ、膝屈筋については、重心の前方制動に伴い、バランスを保持するのに下肢後方筋群の筋力が必要となってくるためと考えられた。FRTと足関節との関連性は可動域、筋力とは認めず、また足底感覚とも認められなかった。これは、足趾及び足底の機能である足把持力といった足部の複雑な制動機能の影響が考えられる。今後さらに対象者数を増やし、前述した点に加え介護度別の比較検討も行っていきたい。
著者関連情報
© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top