抄録
【はじめに】
当院では毎年、地域在住高齢者を対象とした転倒予防教室を開催している。各種検査を実施し、転倒危険率の高い対象者に対し、危険率減少と運動習慣の獲得を目的にフォーローアップ教室(以下教室)を行った。教室前後での検査結果の比較を行い、知見を得たのでここに報告する。
【対象】
教室へ参加した11名(男性2名、女性9名、平均年齢74.3歳±3.98歳)を無作為に2群に分け、マシントレーニング群(以下A群6名)とパフォーマンストレーニング群(以下B群5名)とした。
【方法】
期間は平成19年1月25日~平成19年4月12日まで(月2回)評価は教室前後に運動検査(片脚立位、Functional Reach Test(以下FRT)、Timed Up&Go Test(以下TUG)外乱負荷試験、握力、5m歩行、下肢筋力測定(open・close)と身体計測(身長、体重)を行った。A群は下肢筋力open・close(Well-Round Mizuno社製)、シーテッド・ロー(senoh社製)、バランスボール、エアロバイク(EZ101 COMBI社製)を行い、B群は継ぎ脚歩行、大股歩行、椅座位から2m先へ移動しての玉入れ、手伸ばし、エアースタビライザーを用いた片脚立位、ステップ訓練を行った。ホームエクササイズ(以下ex)としてA群に大殿筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋、前徑骨筋筋力訓練の5種目を指導した。また来院し、トレーニングを行うよう勧めた。B群には、A群の訓練に加え、exを実施するよう指導し、実施状況を記録してもらった。群分けでの訓練実施は参加者の同意を得て行った。
【結果】
教室参加者全体では下肢筋力Close(最大値21.1kg・平均値19.8kg)のみ有意な向上が見られた(p<0.001)。各群ではA群で下肢筋力Close(最大値24.5kg)に有意な向上が見られた(p<0.05)。B群の前後比較とAB群間の比較では、有意差が見られなかった。ex頻度は全体平均1回/2.2日、A群1回/2.6日、B群1回/1.7日であった。
【考察】
今回の結果からは2群間において差はなかった。しかし、全体の前後比較においては下肢筋力に差がみられた。通常、運動頻度は週2回以上と言われているが、当院の開催は月2回という頻度にもかかわらず向上した項目があったことから、exの効果が高かったと言える。また、頻度においてはA群よりB群が高かったが、A群のみ下肢筋力の向上がみられている。これは週1回の指導により正確な運動方法を獲得したことでB群と比較すると効果が高かったといえる。運動習慣の獲得という点では、期間中約2日に1回の運動を行っており、目的は達成できたと考える。今後の課題として参加者の運動継続の確認と、運動内容の変化による効果の差異を比較し、より効果の高い教室を開催していきたい。