抄録
【はじめに】
当院では介護予防事業の1つとして、8種類のマシンを用い、包括的高齢者運動トレーニング「Comprehensive Geriatric Training(以下:CGT)」を行っている。今回、マシントレーニングを実施した結果、体力の維持・向上、歩行距離の拡大が図れたのでCGTの有用性を若干の考察を加え報告する。
【対象者】
対象者は当院の通所リハビリテーション利用者17名(男性:9名、女性:8名、平均年齢76±8.4歳)疾患は脳血管障害8名、頚椎・腰椎疾患3名、その他4名を対象として行った。
【評価と運動】
評価項目は、開眼片脚立ち・ファンクショナルリーチ・Time Up & Go・5m歩行速度(補助具使用有り)の4項目を行い、マシントレーニング10回を1クールとし評価を実施した。マシンの選択は理学療法士が初期評価の段階で筋力・身体能力を考慮し選出した。また、レッグプレス・ニューステップの2つについては全員実施した。運動強度として、1回最大挙上筋力(1RM)にて行い、1RMの60~70%の負荷にて、レッグプレスは10回を1~2セット、ニューステップはBorg scaleを用いきつくない程度の負荷量で5分間行った。
【結果】
2機種のマシントレーニングを実施し、4項目の評価を行った結果、17人中13人に以下のこと(1)開眼片脚立ち平均2.65→3.64秒。(2)ファンクショナルリーチにおいて平均12.3→17.4cm。(3)Time Up & Goにおいて11.6→10.2秒。(4)5m歩行速度(補助具使用有り)において平均7.3→5.3秒の向上が見られた。また、歩行距離の拡大や歩行中のふらつきも軽減した。しかし、17人中4人に関しては向上が見られなかった。
【考察及びまとめ】
今回、高齢者の体力維持・向上を目的にCGTに基づいたトレーニングを実施した。今回行ったマシンの選択として(1)操作が容易である(2)下肢筋力の強化が図れる(3)全身運動を行うことができるという理由からレッグプレスとニューステップの2つを全ての利用者に実施した。評価に向上が見られた利用者に関しては歩行距離の拡大や転倒予防に繋がっていると考える。また、変化の現れなかった利用者に関しても、体力や歩行距離において維持は図れている。今回のマシントレーニングの実施により、CGTの目的である「虚弱高齢者の身体機能の向上を高め要介護に陥ることを防ぐ」ことを達成できたと考える。今後もCGTを行う利用者の数を増やし、体力の維持・向上、歩行距離を高めていくことで介護サービス量の軽減に努めていきたい。