九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 146
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変形性膝関節症女性高齢患者の足把持力に関する研究
*中村 定明村田 伸甲斐 義浩前田 雄一松本 嘉美三宮 貴彦(MD)
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抄録

【目的】
 変形性膝関節症は(以下、膝OA)は、加齢や性差、肥満などがその発症要因とされ、膝の痛みや関節可動域制限および膝周囲筋の筋力低下と、それらによって引き起こされる日常生活活動の制限を主症状とする疾患である。また、内反膝変形などにより荷重に対する力学的負荷を変化させ、脊柱の変形を引き起こす可能性もある。二足歩行を行なう「ヒト」にとって、足底が唯一の接地面であることを考えると足趾機能が立位での活動に果たす役割は非常に大きい。高齢者の転倒との関連性から足趾機能の重要性が報告されており、脊柱や荷重関節にアライメント異常を来たした膝OAでは、足趾機能の低下が推測される。そこで今回、膝OA高齢者と健常高齢者の足把持力ならびに片足立ち保持時間について比較検討した。
【対象と方法】
 膝OA群の対象者は、当院に通院加療中の膝OA患者のうち、重度の認知症がない65歳以上の女性高齢者で、研究に協力が得られた14名(平均年齢73.9±4.2歳)である。健常群の対象者は、地域ミニデイサービス事業に参加している65歳以上の在宅女性高齢者で、Mini‐Mental State Examinationが24点以上であること、要介護認定を受けていないこと、定期的な通院をしていないこと、体調不良の訴えがないことの条件を満たした39名のうち、年齢調整を行なった後無作為抽出された14名(平均年齢73.6±4.9歳)である。調査は体重、足把持力、片足立ち保持時間を測定した。足把持力と片足立ち保持時間の測定は左右2回ずつ測定し、その平均値を採用した。統計処理は膝OA群と健常群の体重、足把持力、片足立ち保持時間の比較には対応のないt検定を用い、測定値の関連性はピアソンの相関係数を用いて検討した。
【結果】
  膝OA群と健常群の年齢、体重、足把持力、片足立ち保持時間のそれぞれの単相関分析の結果、有意な相関が認められたのは膝OA群、健常群ともに足把持力と片足立ち保持時間との相関係数(膝OA群0.67,p<0.01;健常群0.77,p<0.01)のみであった。膝OA群と健常群の比較では体重(p<0.01)、足把持力(p<0.01)、体重比足把持力(p<0.01)、片足立ち保持時間(p<0.05)のすべてに有意差が認められ、体重は膝OA群が有意に重く、他の測定値は有意に低値を示した。
【考察】
  今回の結果より、高齢膝OA患者は健常高齢者に比べ足把持力、片足立ち保持時間ともに低下していた。このことは、高齢膝OA患者の転倒リスクが高いことを示唆しており、高齢膝OA患者の理学療法を実施する場合、評価や治療部位を膝関節とその周囲筋に限定するのではなく、足部機能についても評価する意義と重要性が示唆された。

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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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