抄録
【はじめに】
職業支援において、ノーマライズされた環境(職場等)での就労後必要なスキル訓練の重要性は述べられている。今回、復職に必要な乗車・パソコン操作に対し、直接的介入を行い若干の知見を得られたので以下に報告する。
【症例紹介及び作業療法評価】
(2006.10.24)
37歳男性。左延髄外側脳梗塞。10.4発症。10.23入院。職業内容:配達、パソコンでの事務処理(週2回2時間)。Needs:早期復職。身体機能:複視・眼筋麻痺にて視覚での混乱あり。精神機能:復職への不安強い。乗車(助手席):気分不良強く5分間乗車困難。パソコン:文章入力行うも数十秒で気分不良。
【治療仮説】
直接的介入により復職に必要な身体機能・作業能力・自信の獲得が図れるのではと考えた。
【介入】
[1]乗車:カーブ・直線時の重力に対する視線・姿勢反応誘導。[2]パソコン:本人の訴えを基に場面設定(画面の明るさを落とす、パソコンを右へ移す、手本を見やすい位置へ移す)での入力訓練。[3]職場での職業練習。
【結果】
(2006.11.25)
身体機能:複視・眼筋麻痺軽減し視線のコントロール可能。精神機能:復職への不安消失。乗車(助手席):実際の配達にて30分以上同乗するも気分不良無し。パソコン:環境設定にて休息とりながら30分以上可能。
【考察】
直接的介入により、乗車では実際の重力での視覚と身体の協調を促せた。パソコンでは無理の無い範囲にて視線のコントロールを促せ、早期より実用的な能力の獲得が出来たと考える。直接的介入では本人と具体的な問題点を把握出来、動作の可否が明解で本人によるコツの体感とフィードバックがスムーズに行えた。また、職場での職業訓練を行ったことにより本人の自信の獲得が図れ早期復職に繋がったと考える。