九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 150
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掌側ロッキングプレートを用いた橈骨遠位端骨折の術後成績
*下門 範子前田 祐子安藤 幸助竹内 宏幸中尾 香織戸羽 直樹吉川 聖人
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抄録
【はじめに】
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート(以下VRP)の開発は、従来より骨折部の安定した固定性の獲得をもたらし、治療法の第一選択となりつつある。当院でも手術適応例にはVRPを行っており、VRP術後は早期運動療法、早期社会復帰が可能とされているが、社会復帰に関する報告は少ない。
【目的】
本研究の目的は、当科でのVRPの術後成績、NPO法人ハンドフロンティア作成HAND20(以下HAND20)を用い、橈骨遠位端骨折症例における社会復帰について検討することである。
【対象】
対象は、2007年6月~2008年3月の9ヶ月間に橈骨遠位端骨折に対して観血的に整復され、OTに依頼された25例26手のうち、8週以上経過観察が可能であった14例15手である。内訳は、男性2名女性12名、年齢38歳~85歳(平均68.4歳)作業療法施行期間は平均111.6日であった。受傷機転は、転倒10例、転落2例、交通事故2例である。AO分類(A2:3 B3:1 C1:6 C2:4 C3:1)そのうち1例にKirschner鋼線による経皮的内固定、1例に尺骨粉砕骨折に対してTension band wiringを併用した。
【OTプログラム】
術後翌日より手指・肘・肩関節の自他動運動、痛みのない範囲内で前腕の回内外運動を行い、患肢の日常生活動作使用を促した。術後1週以降はリストサポーターへ変更し訓練・入浴以外装着とした。術後3~5週仮骨形成後より筋力強化訓練を開始、術後4~8週で骨癒合を確認し、他動運動を開始した。術後評価として、関節可動域、X-P撮影を術後2週おきに、HAND20を術後8週後より2週おきに測定した。
【結果】
最終平均自動可動域は、回内79.6度(健側比率97.5%)、回外87.1度(健側比率99.6%)、掌屈55.7度(健側比率87.3%)、背屈82.5度(健側比率89.5%)で、握力は健側比率66.2%であった。レントゲン評価では、整復時と最終時を比較して、RI平均0.5度、VT平均1.2度、UV平均0.4mmの差であった。1例にのみ前腕回外制限が残存し、手関節形成術を行い、最終評価時には、良好な可動域が得られた。HAND20では、平均15.1であり、項目10、11、15、16に高い得点を示すことが多く、重作業や美容面に問題を来たしていた。
【考察】
VRPを行った症例は、全例術後明らかな遠位骨片の転位は認められず、良好な可動域が獲得出来た。しかしHAND20の結果より、重作業や美容面の問題が社会復帰を阻害している一因子となっていることが示唆された。その原因として動作に対する恐怖感→対側肢で動作代償→患側筋力低下と悪循環を繰り返すことも問題であり、セラピィ内容、セラピィ期間が今後の課題である。
今後も症例数を増やし橈骨遠位端骨折における社会復帰について明らかにしていきたい。
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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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