九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 151
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橈骨遠位端骨折後の拘縮例に対する作業療法
*岡本 亜由美
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抄録
【はじめに】
手の骨折は軽視されがちで、リハビリを施行せず経過する場合がある。今回、橈骨遠位端骨折に対する保存的な初期治療後、リハビリを行わず拘縮に陥り、患手を使えないまま長期経過し来院した患者に対し、日常生活において『使える手』の獲得を目的に外来作業療法(以下OT)を実施したので、症例を提示し以下に報告する。
【症例1】
50歳代女性。受傷側は左で、利き手は右。受傷後約3.5ヶ月で当院初診。X-P上、尺側傾斜角(以下RI)10度 掌側傾斜角(以下PT)7度 橈骨尺骨長差(以下UV)5mmで、関節可動域(以下ROM)においては手関節掌屈(以下PF)40度背屈(以下DF)50度、回内(以下pro)40度 回外(以下sup)50度で患手は補助手レベルであった。関節可動域(以下ROM)訓練とともに日常生活活動(以下ADL)指導を行った。OT施行約1.5ヶ月後、PF45度 DF58度、pro70度 sup55度、握力22.8kg(健側比76%)で職業復帰し、OTは自主終了となった。
【症例2】
50歳代女性。受傷側・利き手は右。受傷後5ヶ月で「自分の手ではない様」と訴え当院初診。RI35度 PT20度 UV5mmで、ROMはPF20度 DF45度、pro35度 sup80度、握力10.8kg(健側比36%)であった。ADL上で、包丁を握る・布巾絞り・食器洗浄・床に手を着いて起き上がる動作に困難をきたしていた。OTでは機能訓練とADL動作を行い、使えるという意識付けを中心に行った。OT開始後3ヶ月でADLは自立し、OT施行5ヶ月経過し、PF20度 DF70度、pro35度 sup80度、握力20kg(健側比68%)にて終了となった。
【症例3】
70歳代女性。受傷側・利き手は右。受傷後1.5ヶ月時に右手浮腫・運動障害が気になり当院初診。RI19度 PT7度 UV4mmで、PF20度 DF30度、pro25度 sup10度で、手に力が入らず母指~小指のMP関節に屈曲制限があり、手に力が入らないと訴えていた。機能訓練とともに、ADL訓練を実施。OT施行5ヵ月経過し、PF50度 DF70度、pro85度 sup70度、握力14kg(健側比76%)で、ADL自立し草取りも可能となり終了となった。
【考察・まとめ】
今回の3症例はともに骨折後の安静固定、浮腫、疼痛、運動不足、無知により拘縮をきたし、患手をほとんど使えない補助手状態であった。受傷当初から手をどれ位使ってよいか分からない不安、使えないことでの苛立ち、手の変形に対する見た目の不安、再骨折への恐怖を抱え、現実にADLに支障をきたしていた。そこでOTでは、可能な限り手の機能改善と患者に寄り添いADLやその周辺動作において患者の不安を取り除き、細やかなADL指導を行うことで『患手を使える』という意識付けをし、実生活でのADL遂行が可能となった。志水らは「前腕回外50度、手関節0度から20度の範囲で最も多くのADLを遂行できる」と報告しており、症例1、2ではROMの面においては、初診時から問題がなくADL訓練を導入した。症例3では回外制限が著名であったため、獲得ROMに応じたADL訓練を随時導入していった。今後、このような長期経過患者に対する評価として、DASHなどの自覚的評価も取り入れて行っていきたいと考える。
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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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