抄録
【はじめに】
平成16年12月から2年間、青年海外協力隊(以下協力隊)に参加し約1年10ヶ月作業療法士(OT)としてニカラグア国内で唯一の国立リハビリテーション病院で活動する機会を得た。活動する中で現地における病院スタッフ及び患者・家族のOTに対する認識の低さを実感した。今回その現状及び取り組んだ事を交え報告する。
【活動の概要】
活動先の病院は一階建てで入院ベッド50床を有し、小児から高齢者までの様々な疾患を持つ入院患者及び外来患者に対応する。主な職員構成は医師、看護師、看護助手、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士であった。
協力隊への要請内容としては、現在ニカラグア国内でOTの資格を取得する機関が無いため、作業療法についての情報交換・共有を行う事、マンパワー不足を補い業務改善及び強化を図る事、現地における作業療法の認識を高める事であった。
【現状及び活動内容】
病院スタッフ及び患者・家族のOTに対する認識は低く、実際何を目標にどのようなことを行うのか知らないスタッフがほとんどであり、道具を用いることが多いため遊びの場として捉えられていた。また患者・家族の中にはOT活動を他のリハビリの待合や時間調整のように利用している者が多く見られた。
そこでまずスタッフ及び患者・家族を対象にOTの紹介を行った。病棟には必要に応じて基本動作やADL指導に向かうようにした。病院では家族又は付き添いの人が患者と一緒に寝泊りしているケースが多かったため、居合わせている家族にも患者の能力や動作方法を伝え過介助にならないよう働きかけを行った。看護師は,ほとんどの患者に付き添いがあることから患者のADLにあまり関わりを持っていなかった。そのため、まずは患者のADL及びその能力に目を向けてもらえるよう、主に付き添いのない患者から病棟での動作方法等について実際場面で申し送りを行った。
【まとめ・考察】
ニカラグア国内でリハビリテーションの一環としてまだ一般的に認識されていない作業療法について、現地病院における紹介や実際の関わりを通し働きかけを行ってきた。
OTを待ち時間として利用していた患者・家族には、その都度説明を行いその頻度は徐々に減少した。病棟では患者・家族と基本動作、更衣動作などの訓練・指導を行っていく中で少しずつではあったが上達が見られ、OT及びその必要性に理解を示す言葉が聞かれるようになった。また困っていることについて相談に来る人も見られた。これらはまだごく一部の人にすぎないが、 今回の派遣中に関わりを持つ事が出来た病院スタッフや患者・家族については、その認識を広げる一つの機会となったのではないかと考える。
今後リハビリテーションにおけるOTへの認識を広げ定着させていくためには、さらに継続した関わりが必要であると考えられる。