九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 204
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訪問リハビリテーションにおける新人教育の体制化
*児玉 隆典池永 健太植木 恵島末 智美草野 祥子
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抄録
【はじめに】
 当苑の訪問リハビリテーション(以下、訪問リハと略す) は今年で5年目を迎え、ニーズは年々増加している。しかし、大分県下で訪問リハに従事しているリハスタッフ数は75名と少ない。その背景には職場内のマンパワー不足や、新人は訪問現場に興味があるが、単独で訪問しなければならないという不安により、従事しにくい事が考えられる。そこで当苑では円滑に訪問現場へ介入できるよう「新人教育プログラム」(以下「新プロ」と略す)を作成し、プリセプターシップと並行して新人1名に対し、実施した。
【新人教育プログラムの検討】
 「新プロ」を作成するにあたり訪問現場で必要な事項や、不安の解消につながると思われる11項目を年間計画に組み込んだ。(1)施設運営規定,介護・医療保険制度の理解(2)接遇(3)多くの臨床経験の場の提供(通所リハでの経験) (4)訪問開始までの一連の流れの理解(5)評価の視点(6)リスク管理(バイタルチェック・緊急時の対応・自宅内危険箇所の伝達) (7)利用者・家族との関係の取り方(8)他職種との連携(9)1日のスケジュール管理(10)地域事業に関する知識(11)プリセプターからのアドバイス。また「新プロ」終了時に症例発表を計画した。
【プログラムの実施】
 オリエンテーション時に「新プロ」の目的を明確にし“学術研修”と “技術研修”の2本柱に分けて実施した。
 学術研修(年間を通じて実施);施設運営規定,介護医療制度,認知症,感染症,接遇,個人情報,リスクマネジメント,情報公表研修会参加,通所・訪問書類業務実施,事業所・病院所在地案内。
 技術研修;通所業務実施(4月から3月末),訪問現場見学(4月から8月末:19件), 訪問前訪問(5月から6月末:2件), 時間の流れの理解(7月:3件/1週間×4回),訪問実施(7月:1件) ,8月に1症例目を指導者と毎回同行しながら担当。その際、福祉用具の導入方法を指導した。 9月に2症例目を指導者と同行訪問しながら担当。10月に単独で3症例目担当。11月から3月末までに21症例担当。
【考察】
 新人は入職時に訪問現場で働く事に対する不安を抱いていた。しかし“技術研修”“学術研修”を行う中、毎月フィードバックを行い、新人のペースに合わせ、その都度プログラムの変更を行った事により、単独で訪問するという自信につながったのではないかと考える。また「新プロ」終了時、上記11項目の経験を活かした症例発表を行う事ができた。
【まとめ】
 今回「新プロ」を実施し、基本的な技術・学術研修の教育や、フォロー体制の整備はできた。そこで今後、各事業所に「新プロ」を理解していただく為、挨拶回りを行い、新人でも訪問現場に介入し易い環境を作る事が大事だと考える。また利用者や様々な職種からの訪問リハに対するニーズに応えられるよう、他施設からの見学の受け入れや、他事業所のスタッフとネットワーク作りを行い、地域における訪問リハスタッフ数の底上げに貢献させていただけるよう取り組みたい。
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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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