抄録
【はじめに】
当法人はケアミックス型の施設で、病院とは別に在宅部門がある。その中の障がい者ケアサポートセンター愛・愛(以下愛・愛)では、H19年度の障害者自立支援法の導入に伴い、理学療法士1名が愛・愛に関わり始めた。愛・愛の利用者は、一日の大半を車椅子坐位か背臥位姿勢で過ごされており、車椅子坐位の整合性はあるものの、背臥位姿勢でのポジショニングがなされていないことに問題を感じた。今回はそこに着目し、チーム内の安定した背臥位姿勢についての見直しを図ることで、ポジショニングに対しての着目点が変化したので報告する。
【取り組み内容】
愛・愛の看護師、生活支援員(ヘルパー、介護福祉士、清掃員、事務員、以下支援員)と合同の症例検討を行った。主な内容は1.支援員のポジショニングに対しての理解度確認、2.症例検討とポジショニングについての実技指導を含めた勉強会の二つである。
【症例紹介】
脳髄膜瘤による四肢体幹機能障害と両側性感音性難聴を呈した20歳代の男性。Chailey姿勢能力発達レベルでは背臥位レベル2、椅子座位レベル1。背臥位姿勢は脊柱の右凸の側彎があり、頚部・体幹・股関節の変形が著明。変形に伴い、呼吸を行うときの胸郭の動きは出にくく、呼吸も浅く・不規則な呼吸。
【結果】
支援員のポジショニングに対しての理解度確認から、支援員は利用者の体の変形に気付いているものの、二次的問題点の存在や、ポジショニングが変形の進行予防につながることに気付いていないと分かった。次に症例検討で症例のSPO2が93%から97%に変化したこと・ポジショニング前後での表情や指先の色が変化したこと・胸郭と腹部の動きが良くなり体動が少なくなったことから、ポジショニングの重要性を理解してもらった。客観的な変化があったことから、支援員が他利用者のポジショニングにも興味を持ち始め、他利用者の車椅子の整合性について相談する姿や、自分達でポジショニングを実践する姿が見られるようになった。支援員同士でポジショニングしていく中で、「支援員でも使用できたら家族に指導して家庭でも使用できるのでは」と提案もされた。
【考察】
愛・愛への関わりで、最大の着眼点がポジショニングについてであり、支援員にポジショニングの重要性やポジショニングの知識・方法・応用について理解してもらいたいと取り組みを行ってきた。取り組み内容で特に良かった点としては、症例を通したポジショニング指導を行ったことではないだろうか。症例の今までとは違った表情や様子、客観的な数値を目の当たりにしたことで、ポジショニングの重要性に気付くことができ、他利用者へも実践せねばと感化されたと考える。そして理学療法士が介入したことで互いの意識改革となりチームがより意欲的になってきたのではないだろうか。