九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 24
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視覚障害・知的障害を合併する児への取り組み
~遊びの拡大を目的に~
*神野 清香佐藤 公明原 寛道
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キーワード: 視覚障害, 遊び, 感覚刺激
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抄録

【はじめに】
視覚障害をもつ方が周囲の状況を判断する際、触覚や聴覚を用いた探索が重要となる。今回、遊びの拡がりを目的に、対人対物での関わりを促した結果、症例の遊び方に変化がみられた為、考察を交え報告する。
【症例紹介】
6Y3Mの女児。診断名は、視覚障害(光を感じる程度)、精神運動発達遅滞。人や物への関心が低く、自己への触覚刺激による一人遊びが主。様々な素材の物に触れさせても即離し、触れることもない。トランポリンは好むが、自発的な要求や動作はない。津守稲毛式乳幼児精神発達検査(5Y8M時)MA0Y 6M(視覚面を考慮し、結果を算定)。名前呼びに対し反応はあるが、理解度は不明。笑顔での快反応、手で振り払う不快反応はみられる。
【経過・結果】
1期(人への興味を促す):症例の好むトランポリンの中で、遊びの流れを把握してもらう為、名前呼び・開始前の声かけを統一した。徐々に笑顔やReachがみられ、OTの服を把持し立ち上がるようになった。また、「もう1回」の声に対しReach等、要求がみられ始めた。
2期(対物へ遊びの拡がりを図る):つかまり立ちや動作要求が毎回出てきた為、物への興味や手の触覚経験促し目的で、聴覚誘導の玩具を使用した。鈴付き紐を持たせると、把持後数回ふり音を聞く様子がみられた。聞いた後は離すが、繰り返し同様の遊びが可能。症例の遊び自体に変化がみられ始めた。
3期(玩具での遊びを定着させる):球を叩くと音楽の鳴る玩具を提示し、介助誘導や声かけを行いながら使用方法を教える。その後、自らReach後球を叩いて音楽を鳴らし遊び始めた。その間、持続的に玩具に触れ、音楽を聞いて笑顔になり、音楽が止むと再度球を叩くという持続的な遊びが可能となった。
【考察】
今回の関わりの中で、症例は人と遊ぶ楽しさを感じ、能動的な動作が多くみられるようになった。快刺激を多く感じる中、人と関わりながら遊ぶことに対する、恐怖感や抵抗感が楽しいという経験知識に変化したと考える。さらに経験を繰り返し、聴覚を中心とした症例が分かりやすい関わりや遊びを用いたことで、興味や関心、自発的な要求が生まれ、遊ぶ相手への要求手段も明確なものとなったと考察する。
症例の視覚的に様々な情報を得ることの困難さや知的障害は、自身の身体図式や粗大運動の遅滞に繋がり、さらに遊びや興味の未熟さに大きく関係している。だからこそ、症例の遊びや要求といった外部への発信を育んでいくためには、視覚機能の代替となる感覚を見直しながら、関わり手の統一した対応や聴覚や触覚といった、本人が分かりやすい遊びや課題の提示が不可欠であると考察する。そして聴覚誘導や、様々な素材・物に触れ触覚経験を増やしていく中で、今後能動的な上肢操作や探索活動へと繋げ、ADLの諸動作へ汎化を図っていきたいと考える。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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