九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 43
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脛骨高原骨折を呈した症例の荷重時痛軽減を目的としたアプローチの一考察
前脛骨筋機能改善を目指して
*山下 大地
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抄録

【はじめに】
脛骨高原骨折は、関節内骨折であり、保存療法を選択することで、免荷・部分荷重期間が長期化し、ROM制限、筋力低下、創部付近の癒着など様々な問題が発生する可能性がある。今回、前脛骨筋機能に着目し、臨床推論とアプローチを行うことにより荷重時痛が軽減し、歩行能力の改善がみられたため以下に報告する。
【症例紹介】
症例は50歳代男性。診断名は脛骨高原骨折(保存療法、シーネ固定)。現病歴はX年11月下旬交通事故にて受傷。翌年1月上旬より1/2PWB可能。1月中旬よりFWB可能.1月下旬退院し、外来リハ目的にて当院へ通院。demandとして、長く歩いたときの痛みがとれてほしい。
【理学療法評価】
疼痛検査(VAS)において、創部に荷重時5/10みられた。また、膝関節の不安定感の訴えもみられた。ROM-Tにて、膝関節屈曲(他動)右130°、左145°である。膝蓋腱反射において、右++、左+である。MMT・感覚検査では、著明な異常所見はみられなかった。forward rangeにて、右側knee in-toe out、膝の動揺、数回実施後の前脛骨筋の高緊張と疼痛が観察された。歩行において、LR~MStにて創部の疼痛がみられ、患側への重心移動が困難となり、forefoot rockerが機能せず、歩行効率の低下が観察された。歩行距離が長くなるにつれて、前脛骨筋の高緊張により荷重時の創部痛が増し、それに伴って歩行距離の短縮(約50m)が生じていた。
【臨床推論】
創部が前脛骨筋の起始部に存在し、癒着していることで筋出力として発揮可能な筋の張力が低下している。前脛骨筋機能不全により、荷重時に下腿の外旋が観察され、ACLとPCLの捻れが減少し、膝の不安定感が生じていると推察した。また、長期間のギプス固定により、大腿広筋群の萎縮が生じており、大腿直筋が高緊張を呈していることからも膝の不安定感が助長されていた。臨床推論の裏づけとして、前脛骨筋機能不全と仮定し、足関節背屈、荷重下での下腿の内旋を補助するように、起始部から停止部へと牽引するようにテーピングを貼ることで、歩行時の疼痛軽減が観察された。
【アプローチ】
1)癒着した軟部組織のリリース2)前脛骨筋ストレッチ3)荷重下での前脛骨筋収縮運動4)forward rangeでの動作確認5)大腿広筋群筋力改善運動6)大腿直筋ストレッチ
【結果】
前述のアプローチを2週間(計4回の理学療法)実施することにより、VASにて荷重時2/10となり、痛いというよりだるいとの訴えが観察された。forward rangeにおけるknee in-toe outは軽減し、それに伴い膝関節の動揺は消失。歩行において、右側LR~MStにて疼痛軽減することにより、forefoot rockerが機能し、歩行効率の向上へとつながることで、歩行距離の延長(約500m)が観察された。
【まとめ】
荷重時痛を呈する症例に対し、動作分析による評価と局所の評価を双方から実施することにより、早期に的確な疼痛の原因追求を行っていく必要がある。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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