九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 80
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主婦業の獲得・就労を目標にした通所介護での取り組み
40歳代の症例を通して
*長田 真由美森 勉佐藤 孝臣
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キーワード: 自立支援, 主婦業, 就労
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抄録

【はじめに】
 当施設は平成19年2月にICFの理念を取り入れた通所介護を開始し、自立支援へ向けた取り組みを行なっている。利用者は比較的年齢層が若く日々ニーズも多様化している中、今回主婦業の獲得・就労に向けて支援し、目標の達成に近づいた症例を担当したので報告する。
【症例紹介】
40歳代女性  診断名:クモ膜下出血  障害名:右上下肢麻痺・体幹失調
介護度:要介護度2   前職業:事務職  主目標:就労及び主婦・母親としての役割の獲得
【初期評価】 FIM:107/126
ADL:主に入浴に介助を要し、移動は屋内外手引き歩行。
IADL:家事は殆ど実施せず、外出は通院程度。
【経過】
<1~2ヶ月>ストレッチや筋力訓練、トイレ動作、玄関の出入り、車の昇降、歩行訓練を実施。伝い歩きでの移動のレベルから室内自立歩行へと変化した。
<2~5ヶ月>屋外歩行訓練、家事訓練を実施。盛り付け・配膳・調理・食器洗い等実施。屋外歩行は一本杖で見守りとなり、傘をさしての歩行など応用歩行訓練も行なった。
<5~7ヶ月>自動車運転練習を開始。広い駐車場を利用し安全な条件から始めた。また、就労に向けて前職業から選択したパソコン操作・電卓での計算・伝票整理など実施した。
【7ヶ月後評価】 FIM:122/126
ADL:入浴の自立。移動は屋内独歩で自立、屋外は一本杖で見守りとなる。
IADL:家事は全般的に実施。買い物や観光に限らず、子供の卒業式に出席するなど参加機会が増えた。自動車運転では、安全確認に視野が慣れず若干課題は残ったが運転操作は問題無くスムーズに行なえた。就労面ではやや時間はかかるが、事務作業遂行が可能となり、某会社での就職も現在進行中である。
【考察】
 今回、主婦業の獲得及び就労に向けた事務作業の獲得という結果が得られた。理由として、適切な運動負荷で運動プログラムを行い、同時に活動度を上げて行ったことが大きく関係した。また、主婦業及び就労を介して症例の持つ潜在能力を引き出しながら活動へと結びつけた事、獲得した動作を自宅で繰り返し実施できた事が家事動作獲得に至ったと考える。自動車運転・就労訓練では、ニーズが高い事が今後への不安を助長する危険性もあったが、チーム内で目標を共有し、情報交換が行なえたことで精神面もフォローできた。また、段階付けをしながら導入した事・症例の学習能力が高かった事も、動作獲得に繋がったと考える。今回、症例を通じて通所介護においても活動を見据えた作業療法を実施すれば高いレベルの目標が達成でき、地域分野でも十分効果が出せ利用者の自立支援に繋げることが出来ることを実感した。 

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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