九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 88
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するADLを見据えた装具の検討
~改良・環境設定への関わりを通して~
*渡邊 誠司梅田 理絵佐藤 暁
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キーワード: 装具の改良, 環境設定, ADL
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抄録
【はじめに】
 脳血管障害者に対し、短下肢装具(以下SLB)の使用は歩行だけでなくADLへも影響を及ぼしており、中でも装具着脱自立の可否によって介助量や自立度が変化するケースは少なくない。今回、するADLを見据えた上でSLBの改良、環境設定に注目して装具の着脱自立を目指した結果、ADLへの変化が見られたため以下に報告する。
【症例紹介】
 70代男性 診断名:脳出血(右被殻)発症日:H19年9月 既往歴:後縦靭帯骨化症(約20年前より)片麻痺グレード:上肢3手指4下肢7 ROM;頸部・体幹に重度の可動域制限、頸部から仙骨までの強直も見られる。左肩に中等度の制限あり。FIM:初期時86点→最終時93/126点 主目標:入浴以外の日常生活動作自立し、妻とともに安全な生活を送る。4点杖・SLB使用し、サービスの利用や外出を行っていく。
【経過】
 SLBの作成にあたって、従来の装具では頸部、体幹の可動域制限により着脱不可能となっていた。そのため、装具の作成にあたり改良、環境設定が必要だった。そこで 1)右手で引っ張りやすいようにベルクロの向きの変更 2)ベルトを通しやすいように長くし、先端にリングをつける 3)足関節のストラップの幅を大きくし固定する。以上の改良を加えた。環境設定では、足背部のベルト装着の際に、頸部、体幹の可動域制限により左下肢を地面に接地したままではリーチでも届かず、視覚的にも殆ど見えない状態であったため、環境設定として20cm台の使用、手すり付き椅子の使用、装具を開く型付けを行った。
【結果】
 装具の改良により 1)骨盤の前傾、右上肢のリーチ動作により足背部のベルトに手が届くようになり 2)足背部のベルトの装着可能 3)足関節のストラップの装着可能となった。自宅での装具着脱については、環境設定により昇降座椅子と20cm台を使用して行った結果、自己にて行うことが可能となった。
【考察】
 今回、装具作成時から装具本来の特徴を見失わず、症例の心身機能面の特徴を踏まえた上で装具の改良、環境設定を行ったことで着脱自立に至った。また、装具作成時から着脱自立を見据えた関わりをしたことで、活動向上訓練へとスムーズに移行でき、自宅内歩行、ADL自立へと繋がった。
 装具の着脱について石鳥らは、装具をベッド上ではなく、車椅子にて着用するのは、身体機能が低下しているゆえに、車椅子のバックレスト、スカートガード、フットレストを利用して装着する特徴があるためと述べており、今回自宅では車椅子を利用しないため、手すり付き椅子、20cm台を用いた事により、車椅子の特徴を環境設定として代用でき、自己にて行えるようになったと考える。
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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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