九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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手指変形のある関節リウマチ患者の箸の持ち方と箸操作の傾向
*米田 恵美松元 義彦安藤 千恵野田 辰彦
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抄録

【目的】
 関節リウマチ(以下RA)患者は、経年的に変形する手指に徐々に適応しながら日常生活を送っている。そのため手指変形による機能障害があっても、箸操作などの日常生活において高頻度に行う動作は、ある程度の実用性が保たれていることも多い。しかし、手指機能再建術後の劇的に変化した手指機能に適応することができず、それまで可能であった動作が困難になることがある。実際にそれまで可能であった箸操作が術後に困難となった症例を何例か経験した。そこで今回、術後の箸操作訓練の一助となることを目的とし、RA患者の箸の持ち方や箸操作について分析した。
【対象】
 平成19年~21年に当院で利き手の手指機能再建術を施行し、術前に箸操作が不能であった3名を除いたRA患者40名(男性2名、女性38名)の術前評価を対象とした。平均年齢は58.3±12.6才であった。
【方法】
 手機能評価として、各手指関節の自動関節可動域、中指の中手指節(以下MP)関節の尺側偏位角度(以下尺側偏位角度)、握力、ピンチ力、母指と他指との対立可能および物品をピンチする際の様子をビデオ録画した。箸操作については、10mm立方のスポンジを皿から移す様子をビデオ録画し、中田ら1)の分類した箸の操作パターン(AV型、準AV型、AI型、X型)を基に分類した。さらに、箸の持ち方および操作方法の特徴的なパターンを抽出した。なお、箸は円錐状の塗り箸を使用した。
【結果】
 操作方法、は手指変形の種類や程度に関わらず中田らと同様の分類となり、操作パターンは40例中AV型14例、準AV型11例、AI型11例、X型4例であった。
 また、上記の分類に関わらず特徴的な箸操作として、40例中11例に近箸を固定する際に、中指または環指の指腹で橈側へ押し付ける動作が見られた。この近箸中環指押し付け群とその他の群との尺側偏位角度の平均はそれぞれ22.8度と8.2度であり、優位差(P<0.05)が見られた。また近箸中環指押し付け群11例中5例は、物品のピンチ動作時に母指指節間関節が過伸展位になる傾向が見られた。この過伸展傾向は、全体では40例中13例にみられた。そのほかの項目では優位差はみられなかった。
【考察及びまとめ】
 今回、RA患者に特徴的にみられた近箸中・環指押し付け群については、尺側偏位角度が大きい場合にみられやすかった。これは尺側偏位によりMP関節の支持性が低いため、近箸を母指と中指または環指とで固定することが困難となり、中指または環指の指腹で橈側へ押し付けるのではなかと推測された。
 今後はさらに症例数を増やし、母指と他指との末節での固定性と箸操作との関係についても検討したい。
【参考文献】
 中田眞由美,鎌倉矩子,大滝恭子,三浦香織:健常者における箸使用時の手のかまえと操作パターン,作業療法,12:137-145,1993.

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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