九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 132
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変形性膝関節症に対して、SLR訓練を単独指導した場合の有効性の検討
*宜保 美貴子金城 一樹嶺井 大輔仲宗根 聰
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抄録
【目的】
 変形性膝関節症(以下、膝OA)に対する筋力増強訓練はすでに一般化されている。今回、膝OA患者に対する最も簡単で、高齢者でも実行しやすいと思われるSLR訓練を指導し、疼痛評価、QOL評価、筋力評価に対する有効性を検討したので報告する。
【対象と方法】
 対象は、当院に通院中の膝OA患者のうち、1ヶ月間訓練実行可能であった17名20肢(68~87歳:平均年齢76.4歳、男1名:女16名)の高齢者である。項目は、VAS、QOL評価として転倒予防自己効力感尺度(以下、FPSE:40点満点)、筋力評価として大腿四頭筋、足関節背屈筋を等尺性筋力計 μTas F-1、握力を握力計で測定した。SLR訓練(背臥位になり、片方の膝を直角に曲げ、もう片方の脚を膝伸展位・足関節背屈位で対側膝の高さまであげる。5秒間静止しゆっくりおろす)を1セットにつき20回、1日2セットをホームエクササイズとして指導し、実施状況をリハビリ手帳へ記入してもらった。
【結果】
 VASは、17名中11名が平均17(10~40)mmと改善した。その他の6名では変化はなかった。FPSEは、訓練前は平均26(15~37)点で、減点項目で特に多かったのは、階段や両手に物を持って歩く、でこぼこした道を歩くなどであった。訓練後は、13名が1.6点(1~4点)増加した。特に服の着脱、簡単な買い物・掃除、でこぼこ道を歩く項目などが改善した。大腿四頭筋筋力は、訓練前は健側と比べ患側は20肢中17肢が約1.9kg(1.0~3.8kg)低下していた。訓練後の筋力は訓練前に比べ20肢中14肢が約1.9kg(1.0~3.2kg)増加、3肢は変わらず、残りの3肢は約1.5kg(1.0~2.7kg)低下していた。足関節背屈筋力は、訓練前と比較して訓練後は20肢中13肢が約2.5(2.0~3.0)kgと低下、3肢は変わらず、4肢では1.9(2.6~1.0)kg増加していた。握力は、訓練前と後では17名中14名が約2.2kg増加していた。その他の3名では変化はなかった。
【考察】
 足関節背屈筋力が訓練後に低下した要因として、訓練前には大腿四頭筋筋力の低下によって遊脚期に下腿を十分にあげることが出来ず、代償性に足関節背屈筋の活動を高めていた可能性が考えられる。
長期間の下肢筋力増強訓練の有効性に関しては、多くの報告があるが、今回の結果から1ヶ月という短期間で、しかもSLR訓練という簡単な自主訓練でも疼痛、QOL、筋力の各項目において有効性が示された。特に主観的要素の高いVASやFPSEで改善がみられ、患者の訓練に対する満足度も高かったことから今後の訓練継続にも繋がると思われた。また、長期通院が困難な患者にも簡単で実行しやすいSLR訓練は活かせるのではないかと考えられた。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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