九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 133
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人工膝関節全置換術後の膝関節可動域の追跡調査
~理学療法フォローアップの必要性の検討~
*佐伯 親男加藤 友和山本 健一築地 弘志稲本 裕子甲斐 睦章
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抄録
【はじめに】
 当院では2005年より最小侵襲手術(MIS)での人工膝関節全置換術(TKA)を導入している。MIS-TKAの導入は膝関節の深屈曲を可能とし、膝関節可動域(ROM)屈曲120度の獲得を目標とする理学療法も変化するべき時期にきている。術式や術後に合わせた術後療法や生活様式の指導もフォローアップとして必要である。しかし、術後に獲得したROMが退院後に低下しているのが現状である。今回、クリニカルパスでの退院後、理学療法士によるフォローアップの有無により、長期的ROMがどう変化するのかを調査、検討したので報告する。尚、症例には本件に関し、十分説明し同意を得た。
【対象】
 2006年4月から2008年11月の間に当院で施行されたMIS-TKA153膝、平均年齢73.3±7.6歳を対象とした。対象疾患は、変形性膝関節症と関節リウマチとし、再置換の場合は除外した。
【方法】
 退院後外来理学療法施行ケース(施行群)68膝と非施行ケース(非施行群)85膝を対象に、退院時のROMと、退院後3ヶ月、退院後6ヶ月のROMを測定し、施行群と非施行群とで分散分析を用いて比較した。施行群は退院後に2回以上理学療法を施行したケースとした。
【結果】
 退院後の理学療法介入の有無によるROMに有意差(p=0.03)を認めた。退院時平均の133.0±10.2度に対し、6ヵ月後で施行群では130.8±11.7度、非施行群では127.3±13.2度となった。
【考察】
 術後に獲得した可動域が、在宅の生活の中で、疼痛または他要因によって膝の関節運動を行わないことにより修復段階の筋(主として大腿四頭筋)・軟部組織に伸張性の低下や癒着、瘢痕化を生じることがROM低下の原因と考える。また術後の瘢痕化は約3~4週で生じるとの見解もあり、入院期間のみの理学療法では限界があると考えられる。退院後の理学療法介入は、適切なホームプログラムの指導や現状の評価、患者様への意識付けに影響し、セラピスト側も時期的な状態変化の評価が機能予後の正確性を高めることが出来る。
 MIS-TKAでは侵襲部位の軽減により、筋力や可動域・歩行・ADLの改善が早期に改善可能となる。膝可動性は近位関節の負担軽減や各動作の運動効率の向上に影響する。退院後のセラピストによる評価・治療の介入により、各々の患者様に適した時間的・頻度的問題の解決やホームプログラムの徹底、コンプライアンス行動の確立はMIS-TKAを施行した患者様のADLやQOLの向上に直接的に繋がると考える。また、地域や在宅に復帰する中で生じる転院や訪問リハビリテーションなど社会資源の導入にあたり、理学療法士間や病院・地域間の共通認識による情報の共有や、有機的連携の重要性・必要性を今後検討していく必要がある。
【まとめ】
最小侵襲手術での人工膝関節全置換術における半年間の膝関節可動性の変化を調査した。
術後の膝関節可動域低下は、理学療法の介入により予防することが可能である。
今後も、最小侵襲手術での人工膝関節全置換術における長期的経過の追跡調査が必要である。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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