九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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異なる姿勢における横隔膜運動の変化
*川島 由希大塚 もも子金子 秀雄
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抄録

【目的】
 急性期では肺合併症予防のため,腹臥位や側臥位への体位変換が行われている.しかし,その時の横隔膜運動の変化についてはあまりよく知られていない.MRIや超音波診断装置を用いた先行研究において側臥位や腹臥位の横隔膜運動の変化が示されているが,その報告は少なく,これらの体位を同時に比較した先行研究はない.
 そこで今回の研究では,健常な人において,安静呼吸での様々な姿勢の中での横隔膜運動について超音波画像を用いて把握することを目的とした.
【方法】
 健常な男子学生12名,平均年齢22.1±0.79歳,平均身長1.74±0.05m,平均体重63.8±7.4kgを対象とした.対象者には内容を十分に説明し,同意を得た.
 安静呼吸時の横隔膜運動を測定に超音波診断装置(Bモード,3.5MHz),リニア式プローブ(8.0cm)を使用し,1)背臥位,2)左側臥位,3)腹臥位の3条件で行った.各条件において,一回換気量と呼吸数の測定にスパイロメータを使用した.
 対象者はフェイスマスクを装着し,マット上に安楽な姿勢をとり,測定肢位の順番はランダムに決定した.プローブは右中腋窩線上に置き,モニター上にて横隔膜の境界が表出できるようプローブの位置や超音波診断装置のゲインを微調整した.その後,対象者が安静呼吸であることを確認し,超音波画像をビデオカメラに録画した.各測定は同一検者が行った.録画した超音波画像をパーソナルコンピュータに取り込み,動画ソフト上にて安静呼気終末,安静吸気終末における静止画像を抽出,解析し,横隔膜の頭尾方向の移動距離を1mm単位で測定した.3呼吸分の平均値を代表値とした.
 各姿勢別に横隔膜の移動距離と一回換気量(TV),呼吸数(RR)を比較するために,Tukey法による多重比較を行った.有意水準は5%とし,それ未満を有意とした.
【結果】
 横隔膜の移動距離は背臥位,腹臥位に比べ,左側臥位では有意に小さかったが(p<0.05),背臥位と腹臥位ではほぼ同等であった.横隔膜の移動距離が最も大きかった姿勢を対象者別にみると,背臥位,腹臥位でそれぞれ6名であった.このときTV,RRに有意差はなかった.
【考察】
 左側臥位では横隔膜の移動距離が有意に小さくなった.側臥位での横隔膜運動は重力の影響により下側が大きくなる.そのため上側では静水圧が減少し,右横隔膜の移動距離が減少していたと考えられる.背臥位と腹臥位での横隔膜の移動距離はほぼ同等であり,MRIを用いて比較した先行研究と同じ結果となった.しかし,背臥位と腹臥位における横隔膜運動の変化は対象者によって異なり,個々の呼吸パターンに影響されていることが考えられる.
 今回の研究により,健常男性における背臥位,腹臥位時の横隔膜運動の変化は対象者によって異なることから呼吸パターンの変化は個別に捉える必要があると思われた.

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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