九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 174
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シャイドレーガー症候群患者へのコミュニケーション支援
*森 沙弥香元村 隆弘岩永 梨沙
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抄録

【はじめに】
 神経筋難病では構音障害や上肢の機能障害により、会話や書字でのコミュニケーションが困難となるため、患者の安全を確保するためのコミュニケーション機器の導入や操作スイッチの選定が重要となる.今回、シャイドレーガー症候群(以下、SDS )により、重度の自律神経症状、錐体外路症状、小脳症状を呈する症例を担当し、STと共同でナースコール(以下、NC)の改良とコミュニケーション・エイドの導入について検討したので報告する.尚、本研究は症例や家族の承認を受け実施した.
【症例】
 60歳代男性.H12年頃から転倒・発汗障害出現し、H13年SDSと診断.H15年頃から車椅子での生活となり発語も聞き取りにくくなる.在宅療養中であったが、H18年リハビリテーション目的で当院入院.H19年気道内分泌物貯留が増加したため気管切開実施.気管切開後も経口摂取を試みるが気道内分泌物が多く、同年胃瘻造設する.
【作業療法評価】
 ROM:両手関節・左手指は制限なし.MMT:上肢近位は1~2、上肢遠位は3(R>L).下肢1.体幹1.感覚:詳細な評価は困難だが触覚や痛覚は判別可能.失調症状:振戦、測定障害.ICARS:85点.パーキンソン症状:四肢の歯車様筋固縮.UPDRS運動機能項目:45/56点.自律神経症状:起立性低血圧、便秘、排尿障害.言語機能:発語困難なため、Yes/Noを瞬きで示す.理解は良好.基本動作、ADL動作は全介助.NCは左手指に把持し、右母指で操作可能.FIM:36点(運動項目13点、認知項目23点).
【経過】
1.伝の心(株式会社日立ケーイーシステム製)
H19年4月伝の心を導入.スペックスイッチ(パシフィックサプライ株式会社製)を左示指と左母指の側方つまみ動作で練習開始.H20年2月頃より気道内分泌物貯留が増加し、伝の心練習時に疲労がみられ、入力文字数が減少、誤字が増加.
2.NC
H19年10月より北九州障害福祉センターのSTを交え、スペックスイッチ式NCへの変更を検討開始.H20年2月NC使用時に視覚的なフィードバックができるよう環境整備実施.H20年3月スペックスイッチ式NC導入を検討し、同年4月より使用開始.本人の意思による活用がみられ、夜間の睡眠時間が増加.H20年6月不随意運動による誤差動が増えたため、ストリングスイッチ式NCへ変更し使用開始.
【考察】
 患者が安心して療養生活を送るためにコミュニケーション手段を確保していくことは最も重要なことである.症状の進行によりできなくなることが増えていく中で、何らかの意思伝達方法を見つけ、できる可能性を引き出していくことが作業療法士の役割の一つであると考える.今回、病状の進行に合わせたスイッチの選定や症例や家族の要望に近づけるように適宜カンファレンスを実施することで、本人の意志によるNCの活用を維持できたことが、夜間の睡眠時間の確保、症例や家族が安心して過ごせる療養環境の提供に繋がったと考える.

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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