九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 182
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在宅復帰に向けての当院での関わり
~復帰に向けたチームアプローチの重要性~
*生田 哲郎前田 英児池田 絵里香鎌? 佑佳青木 奈菜原田 忠行
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抄録
【はじめに】
 患者様(以下症例)の在宅復帰を円滑に進めていく上で、症例、家族、関係スタッフの連携は非常に重要である。当院では症例の実生活場面での評価に重きをおき、複数回の訪問指導を実施している。今回は、4回の訪問を実施し、連携を密に行うことで、退院に繋げる事ができた症例について報告する。
【症例紹介】
 90歳代女性。診断名:アテローム血栓性脳梗塞(左尾状核、放線冠)、中等度失語症(運動性-喚語困難、意味性錯語あり)。病前生活:一人暮らし、キーパーソン:弟夫婦。入院前の利用サービス:ホームヘルパー(掃除、洗濯[洗うのみ]、入浴見守り)。病棟内ADL能力:入浴のみ見守り、問題解決能力が低下しており動作時の安全面の配慮など周囲からの修正が必要。
【訪問指導と実施目的】
1回目:家屋内外での動作確認<可能な動作の確認、課題となる生活場面の抽出>
2回目:症例の在宅にて、家族との担当者会議<それぞれ情報共有しサービス内容等の再調整を行う>
3回目:1日外出(8時~19時)<症例の一日の活動内容を確認、生活場面の課題の修正>
症例は在宅にて、生活場面に即した動作が自発的に見られた。外出後から、病棟生活でも自宅を想定した環境調整、訓練プログラムの設定ができ、症例、家族、関係スタッフとの連携がより一層高まる。
4回目:入浴動作確認<家族との最終の動作確認、サービス内容の再確認>
実際に入浴をしてもらい、介護上の注意点を関係スタッフ、家族と共有した。また脱衣時の椅子の設置、トイレにパットの設置するなどの生活環境の調整を行う。
【チームアプローチの実際とまとめ】
 症例は失語症、問題解決能力の低下により、病棟での生活にもうまく適応できていない状態であった。それにより、家族の在宅復帰に対しての不安も大きかった。今回、4回の訪問指導を行うことにより、当初から家族、ケアマネジャー、MSW、当院スタッフが顔を合わせる機会も多く、具体的な課題解決の方法、目標・期間の設定について随時修正を行いながら情報の共有を行っていった。この事により、家族が症例の現状、今後の課題を理解する上で、大きな効果になったと思われる。そして家族が打ち解けてくるにつれ、より具体的な不安の発言などもあり、その不安を一つずつ取り除いていく援助を行った。その結果、症例・家族に対し常に包括的な援助を実現することが可能となったと考える。
 今回の関わりを通し、症例、家族、関係スタッフが退院後の生活場面をイメージし共有する事は非常に重要だと改めて感じた。今後も生活場面にアプローチしていくOTとしての専門性も活かし、さらに深い関わりを展開していきたい
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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