九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 183
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外傷性脊髄損傷後のFrankel分類の回復過程
*出田 良輔椎野 達植田 尊善
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抄録
【はじめに】
 脊髄損傷において神経学的損傷高位とその程度はADL自立において極めて重要な因子である。受傷後の機能回復予後を判断する能力は、リハビリテーションプログラムの立案の上で重要となる。しかし、国内での機能回復の経時的変化に関する報告は極めて少ないのが現状である。今回、当院データベースをもとに改良Frankel分類の回復過程について検討したのでここに報告する。
【対象・方法】
 対象は、当院データベース登録者(2005年7月〜2009年4月)で、以下の条件1)受傷後1週間以内に搬送、2)受傷後180日以上経過観察、3)入院時改良Frankel分類がA-C2であった者、を満たした脊髄損傷者76名(男性61名、女15名、平均年齢=53.5±18.9歳)である。方法は、入院時、受傷後3ヶ月、6ヶ月での改良Frankel分類の回復割合と歩行可能(改良Frankel分類D1以上)の割合を調査した。なお、対象者全員に対し本研究の趣旨を説明し同意を得ている。
【結果】
 3ヶ月時点において、76名中46名(60%)に回復が認められた。内訳(D1以上への回復割合)は、A→B1以上:10%(0%)・B1→B2以上:100%(43%)・B2→B3以上:100%(17%)・B3→C1以上:100%(60%)・C1→C2以上:93%(60%)・C2→D以上:79%(79%)であった。6ヶ月時点において、76名中49名(64%)に回復が認められた。内訳は、A→B1以上:14%(0%)・B1→B2以上:100%(71%)・B2→B3以上: 100%(50%)・B3→C1以上:100%(40%)・C1→C2以上:93%(80%)・C2→D以上:93%(93%)であった。
【考察】
 全対象の6割以上に何らかの回復が認められ、改良Frankel分類A以外では9割以上で何らかの回復が認められた。また、受傷後1週間以内での改良Frankel分類B・群において、3ヶ月後・6ヶ月後それぞれの歩行可能となる割合はB(3M:40%・6M:54%)・C(3M:69%・6M:86%)であった。受傷後1週間以内での損傷高位以下の感覚残存は、歩行の予後予測因子として重要であることが示唆された。麻痺の回復をある程度想定した上で、リハビリテーションプログラムを作成する必要があり、長期的視野のもとでリハビリテーションを行う必要があると考えられる。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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