九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 227
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当院における糖尿病教育入院への取り組み
-理学療法士介入の影響と現在の問題点-
*十時 浩二
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抄録
【目的】
 当院では10日間(試験外泊2日を含む)の糖尿病教育入院を実施しており、2008年より糖尿病患者を対象に理学療法士が運動療法に関する講義を行っている。今回、講義前後での身体活動量(=歩数)の変化と講義の内容が患者に理解されているかを調査し、現在の問題点について検討したので報告する。
【対象】
 対象は、2009年1月~3月までの間に、当院の糖尿病教室に参加した患者10名のうち運動療法が可能であった2型糖尿病患者7名(男性2名、女性5名)で、平均年齢は62.6歳であった。合併症は、網膜症4名・神経症1名・腎症2名であった。また、教育入院中に糖尿病性腎症III期bであることが判明した患者2名はADL維持程度の運動が処方され、調査の対象とした。
【方法】
 糖尿病教育入院時に歩数計(スズケン社製ライフコーダEX)を配布し、使用目的の説明と装着方法の指導を行った。入院4日目に糖尿病の運動療法について講義を行い、講義前後の歩数を比較した。講義の内容は、一般の運動療法(種類・強度・継続時間・頻度・実施時間)に加え、各患者の合併症や症状に対応した講義を行った。また、歩数計回収後のデータから歩行した時間帯を調査した。食後2時間以内の歩行の割合を講義前後で比較し、これを運動療法の講義の理解度とした。
【結果】
 歩数の平均は、講義前3627歩から講義後3984歩と10%増加した。入院期間中の歩数と外泊時の歩数を比較すると3389歩から4590歩へと35%増加した。
 時間帯に関しては、食後2時間以内の割合は、講義前は32.3%であったのに対し、講義後は62.7%へと増加がみられた。
【考察】
 講義前後の歩数の増加はそれほど認められなかった。これは、講義後に具体的な歩行時間や歩数を提示しなかったことが原因と考えられる。講義後に講義前のデータを踏まえた個別の目標設定や合併症患者には症状に合わせた運動処方が必要であると考える。また、教育入院中は検査や講義などが多いため、歩行の時間を設けるなどパスの見直しも必要である。
 食後2時間以内に歩行を行う割合が増加したことは、糖尿病の運動療法に関しての理解が図れ、実践できたのではないかと考える。しかし、時間帯以外の講義の内容が十分に理解できているかはわからないため、講義の内容を再考するためにもアンケートやテスト形式にて理解度をチェックする必要があると考える。
【まとめ】
 今回、明らかになった問題点は早急に改善し、運動継続という最大の課題に取り組む必要があると考える。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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