九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 026
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買い物を楽しく
~ スムーズに品物を探すためには ~
*黒木 俊光藤川 努
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キーワード: 買い物, ストレス, 長期入院
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抄録

【はじめに】
 買い物は、衣食住の全てに関係し、在宅での生活を行う上で非常に重要な活動である。しかし、長期における当院ストレスケア(精神科)入院患者は、買い物に対し不安を訴える者が多い。今回、買い物の不安な要素の一つと考えられる「品物をスムーズに探す」ことに着目し検査を行い、若干の知見を得たのでここに報告する。
【方法】
 次の3つの検査を行った。
(1)実地検査とし、スーパーで陳列してある品物の中から、メモ(同じ種別が続かないように配慮)を見ながら15品目を探し出す課題(制限時間20分)
(2)品物の写真50枚を10種の種別に分ける課題(制限時間10分)
(3)スーパーの新聞折り込みチラシより(1)と同じ様にメモを見ながら15品目を探し出す課題(制限時間10分)
【対象者】
 当院の活動プログラムの社会生活トレーニングに参加している開放病棟入院患者6名。内訳は、男性2名(器質性人格障害1名、アルコール精神病1名)、女性4名(統合失調症4名)。平均年齢60.7±16歳。平均在院年数15年11ヶ月。また、全員、疾病からくる明らかな精神症状による行動化などは認められていない。
【結果】
 (1)では、時間内で全て探すことが出来た者は3名であった。探し方として、一つの品物を見つけるとメモを確認し、同じ売り場にある別の品物(野菜・果物は15品目中5品)を探す傾向が見られた。逆に、見つけることが出来なかった者3名は、メモを見ながら一つの品物を探し歩き、見つけた後も同じ売り場にある別の品物には気が付かないようであった。(2)では、時間内に出来た者は2名で、品物分類の正解率は96%と84%であった。時間外になった者の内1名は、25枚しか分類できなかったが、その中での正解率は96%であった。他の3名は、正解率60%以下であり、(1)で品物を見つけることが出来なかった者と同一であった。(3)では、時間内で探せた者は3名であり、メモとチラシを見比べながら探していた。時間外になった患者は、(1)と同様に1つの品物を探しており、チラシの裏表を何度も見返していた。(1)から(3)の検査全てにおいて、時間内で出来た者は同一者であり、統合失調症の2名であった。
【考察】
 結果より、品物をスムーズに探すには「探す品物の種別が分かる」ことが重要ではないかと考えられる。また、今回の検査でメモを利用した理由としては、ワーキングメモリ機能を利用するためであった。しかし、メモに書かれている品物が視線の中に入っても、今探している品物にしか注意を向けられず、気付かずにいた。これは、注意機能面や認知機能面、環境への適応能力なども影響していると考えられ、今後精査を行っていきたい。しかし、メモの記載の仕方を種別ごとにする、品物の種別分類が出来るようにするなど、今後のトレーニングに活かせる情報が得られたと考えている。

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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