九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 051
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臨床実習における積極性の検討
学生の視点・指導者の視点
*浅海 靖恵藤原 裕弥
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抄録


【はじめに】
 辞典によれば、「積極性」とは、進んでものごとを行おうとする性質とあるが、現在、理学療法士教育における臨床実習の場で「積極性がない」ことが問題にされることが少なくない。「積極性」とは何なのか?今回、臨床実習評価表、学生とのディスカッション、実習後アンケートを活用し、学生と実習指導者双方の考える「積極性」に焦点をあて検討を行ったのでここに報告する。
【対象】
 Sリハビリテーション学院理学療法学科、夜間コース1期生25名・昼間コース2期生36名
【方法】
 1.短期実習(実習I)、長期実習(実習II-1、II-2)における臨床実習評価表より最終判定に至った理由(実習指導者自由記述部分)を抜粋し、テキストマイニングの手法を用いて、実習ごとに頻出語を抽出、「積極性」の用いられ方を確認する。2.実習評価表、学生とのディスカッション、実習II-2終了後実施したアンケートを利用し「積極性」の分析を行う。
【結果】
 1.成績報告書の判定理由の記述において「積極」という単語が用いられた回数は63回、「実習」「評価」「患者」「思う」「今後」「知識」に次ぐ7番目に高い頻度であった。中でも、実習I、実習II-1において共起性が高かった。2.実習指導者による積極性の評価は、実習II-1とII-2において弱い相関が認められ、実習II-2については学生の自己評価との相関が認められた。3.学生アンケートにおいて、積極性が出せた群(5段階評価1,2)は41%、積極性が出せなかった群(5段階評価4,5)は29.5%であり、年齢、性別による有意差はなかった。また、学生や実習指導者が積極性の出せない理由として挙げた「PTになりたいという意欲」「実習に対する自信(不安度)」「性格」「成績」と「積極性」との相関は認められず、「スタッフとの関係性」にのみ正の相関が認められた。さらに、「実習満足度」に関連する因子として、「臨床実習後の意欲変化」「実習指導者の評価に対する納得の度合い」に次いで、「実習中の積極性」に高い正の相関が認められた。
【考察】
 今回の結果より、多くの実習指導者が臨床実習場面において学生が積極的に行動することを期待していることが伺えたが、「積極性」を考える際、意欲、自信、性格、成績など個人の内部に完結して存在するだけの特性として捉えるのではなく、実際には周りの環境とのやりとり(関係)のありかたなど、行動化に影響を与える因子を探ることの重要性が示唆された。

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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