九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 080
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Love法施行後の症例に対する理学療法の1考察
*田中 泰山辛嶋 良介杉木 知武田村 裕昭川嶌 眞人
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抄録
【はじめに】
 今回、腰椎椎間板ヘルニアを呈し、Love法を施行した症例を担当した。腰椎椎間板ヘルニアに対する術後の理学療法として、日常生活における中間位保持の意識が重要であり、腹腔内圧上昇による腰椎全体の安定性の獲得、腰部多裂筋の機能改善が必要と考える。そこで術後の端座位姿勢を臨床指標としアプローチを行った結果、姿勢改善と共に疼痛改善が得られたのでここに報告する。
【症例紹介】
 20歳代の女性。2009年1月22日にL5領域の痛みと痺れ増強し、同年1月26日に腰椎椎間板ヘルニアの診断で当院に保存療法目的で入院後、症状悪化したため、2月20日にLove法施行となった。1月26日のMRI所見ではL4、5間に右ヘルニア突出が認められ、2月14日のMRI所見ではL4、5間の右ヘルニア突出拡大が認められた。
【理学療法評価】
 疼痛は端座位での体幹伸展動作において右腰部痛Visual Analogue Scale(以下VAS)3/10、L5領域の痛みと痺れ(VAS6/10)出現。また、右膝伸展時にL5領域の痛みと痺れ(VAS6/10)出現。Straight leg raising testは40°で右大腿後面に痛み(VAS3/10)出現した。膝蓋腱反射は右消失。表在感覚はL5領域に軽度鈍麻が認められた。端座位姿勢は骨盤後傾位、骨盤左下制・体幹右側屈位を呈し、脊柱起立筋、左腰部に筋緊張亢進が認められた。
【術後理学療法アプローチと結果】
 股関節可動域改善訓練、骨盤周囲筋機能改善訓練、腹腔内圧改善訓練、多裂筋機能改善訓練、端座位における骨盤中間位保持訓練を実施。結果、術後からL5領域の痛みと痺れは消失。Straight leg raising testは70°と改善し、端座位姿勢では骨盤後傾位、骨盤左下制、体幹右側屈位は改善し、骨盤中間位保持での端座位姿勢獲得となった。
【考察】
 本症例のLove法後のアプローチを、以下の3つの事を念頭に実施した。1.本症例の術前の端座位姿勢はL4、5間の右ヘルニア突出によるL5領域の痛みと痺れを逃避した骨盤後傾位、骨盤左下制、体幹右側屈位であった。この不良姿勢は多裂筋椎弓線維を片側性に委縮させていると考えられる。また、術後もこの不良姿勢が持続すれば、椎間板の荷重分圧不良によるヘルニア再発を招くと考えられる。2.術中の多裂筋腱切離による多裂筋機能低下が考えられ、腰部多裂筋の単独収縮が必要と考えられる。3.腹横筋と内腹斜筋の収縮は、体幹の他動的システムである胸腰筋膜を中心とした後部靱帯系に緊張を与え、腹腔内圧を上昇させ腰椎全体の機械的安定性に寄与する。以上のことから腹腔内圧の上昇、腰部多裂筋の単独収縮改善を中心にアプローチを実施した結果、腰椎全体の安定性が図れ、骨盤中間位での端座位姿勢を獲得したと考える。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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