九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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機能的片麻痺歩行評価表(FAHG)と歩行能力及び麻痺側運動機能との関連性
*長野 毅松崎 哲治堺 裕
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抄録

【はじめに】
機能的片麻痺歩行評価表(Functional Assessment for Hemiplegic Gait:FAHG)は、我々が行ってきた研究結果を基に開発した脳血管障害後片麻痺者(片麻痺者)の歩行を評価する検査表である。21項目からなり、総得点は50点満点(内訳:体幹6点、立脚初期11点、立脚中期11点、立脚後期11点、遊脚期11点)であり、各項目は麻痺側を中心に身体各部分の運動性(運動方向)と歩幅を観察して判断し、点数化する。これまでに、FAHGの検者間信頼性と内的整合性は検証している。今回は、片麻痺者の客観的な評価として一般的に用いられている評価項目とFAHGの関連性を調査することで、FAHGの有用性を検証するのが目的である。
【対象】
4施設で入院及び外来にてリハビリテーションサービスを受けている片麻痺者38名(右麻痺20名・左麻痺18名、10歳代2名・30歳代1名・40歳代2名・50歳代9名・60歳代10名・70歳代9名・80歳代4名・90歳代1名、平均発症期間44.2±60.2ヶ月)であった。
【方法】
歩行時の運動機能はFAHGを用い点数化した。歩行能力として、歩行レベルを1点(全介助)~10点(屋外独歩)で採点し、歩行のスピード性は10m歩行時間を計測した。加えて、麻痺側上肢・下肢の運動機能はBrunnstrom recovery stage(Br-stage)を用い6段階で評価した。統計学的処理は、FAHGの合計点及び体幹、立脚初期、立脚中期、立脚後期、遊脚期の各相の点数と、歩行能力(レベル・スピード性)、Br-stageの関連性について、Spearman順位相関係数にて検証した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
FAHG合計と歩行レベル、スピード性、上肢・下肢運動機能の全てにおいて有意水準1%未満で相関が認められた。スピード性とはr=-0.8と高い相関が得られた。FAHGの体幹及び各相点数と歩行レベル、スピード性、上肢・下肢運動機能は有意水準1%未満ないし5%未満で全てにおいて相関が認められた。スピード性とは全てで1%未満での相関であった。
【考察】
FAHG合計点だけではなく、体幹及び各相の点数に関しても歩行能力(レベルとスピード性)、上肢・下肢運動機能との相関が認められた。すなわち、FAHGの点数が高くなっていくことに伴って、歩行の自立度と麻痺側上肢・下肢の運動機能が高くなり、10m歩行時間が短くなるという関係である。これにより、歩行のレベルとスピード性及び上肢・下肢運動機能からみて、歩行時の各関節の運動性を観察することの必要性が改めて確認できた。このことからFAHGは片麻痺歩行の評価法として有用であると思われる。今後は、歩行レベルごとの運動機能の特徴を明らかにしていきたい。

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