九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 21
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周術期前十字靭帯再建術症例に対する低周波電気刺激の即時効果
-表面筋電図を用いての検討-
*石井 瞬下迫 淳平川原 紗弥香森本 陽介上原 ひろの山下 正太郎米倉 暁彦
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抄録

【はじめに】
前十字靭帯の受傷直後や手術直後には膝周囲の腫脹が強く、大腿四頭筋,特に内側広筋の萎縮が生じやすいといわれている。内側広筋の筋萎縮予防として電気筋肉刺激(以下EMS)を用いて軽度膝屈曲位での大腿四頭筋セッティング(以下セッティング)を行わせることが多い。今回表面筋電図を用いて前十字靭帯再建術(以下ACLR)症例の周術期におけるEMSに対する即時効果を中間周波数(以下MdPF)・筋電図積分値(以下IEMG)を使用し検討したので報告する。
【対象と方法】
対象は当院にてACLRを施行した症例の術前10名(男性8名・女性2名)・術後11名(男性9名・女性2名)とした。対象症例には本研究の目的・方法及び危険性等を説明し同意を得た。測定時期は手術前日・手術14日後・測定筋は両側の内側広筋(以下VM)・外側広筋(以下VL)・半腱様筋(以下ST)とした。EMSはスーパーテクトロンHX606(テクノリンク社)にてVMに低周波電気刺激を与えながらセッティングを10分間実施した。EMS前後に術側・非術側共にセッティングを3回実施し、MULTI-TELEMETR 511(日本電気三栄社)を用い、サンプリング周波数1kHzで導出・記録した。記録した筋電図については生体情報解析プログラムBIMUTAS2(キッセイコムテック社)を用いて、運動開始後より波形の安定した2秒間の各筋のIEMG・MdPFを算出した。IEMGはEMS前の測定値を100%としてEMS後の増加率を算出した。同時にVM/VL比・ST/VM比を算出した。統計処理にはWilcoxonの符号付き順位検定を用い有意水準は5%未満として、術前後の術側・非術側におけるEMS前後の値を比較した。
【結果】
MdPFは術前非術側VLに優位な減少が認められ、それ以外にはEMS前後に優位な差は認められなかった。IEMGは術前術側VM・VL,術後非術側のVM・VL・ST,術後術側VM・VLにおいて優位な増加が認められた。VM/VL比・ST/VM比には優位な差は認められなかったが、術前術側においてST/VM比に減少傾向が認められた。
【考察】
MdPFは速筋線維比率・IEMGは動員される筋線維数に相関するといわれている。また、筋疲労の進行に伴いMdPFが一貫して低下すること、IEMGが増加することは多数報告されている。今回は術前術側,術後術側・非術側のEMS後にはVM・VLを中心にIEMGのみが増加する傾向が認められた。MdPFの減少が認められないために、この結果は筋線維数の動員の増加に伴い筋出力が向上したと考えられる。ACLR周術期におけるEMSを用いたセッティング練習は即時的効果があることが示唆された。低周波電気刺激のみの効果・長期的な効果に関しては今後も検討が必要である。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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