抄録
【はじめに】
亜急性期病床は2004年4月に「急性期治療を経過した患者,在宅・介護施設等からの患者であって症状の急性憎悪した患者等に対し,在宅復帰支援機能を有し,効率的かつ密度の高い医療を提供する」との目的で認可された.当院でも昨年より亜急性期病床を10床設け,PT・OTを1名ずつ配置している.しかし当初はスタッフ間での情報共有や,ADL介入への不十分さが目立った.そこで今回,カンファレンスや情報共有に関して他職種と取り組み,取り組み前後で退院時の転帰先等にどのような変化が見られたかを比較検討し,取り組みの具体的な経過も加え報告する.
【対象と方法】
対象は2008年6月~2009年11月までに亜急性期病床に入院した患者107名とする.今回は,他職種との連携に対して取り組みを開始した2009年3月~11月と,それ以前の2008年6月~2009年2月における自宅復帰率・入院期間・転帰先等をMann-whitnyU検定とΧ2検定にて比較検討した.
【取り組みと経過】
開設当初からカンファレンスの場を設けていたが,当初は病棟管理に依存し不定期だった.そこで,病棟へのカンファレンス予定ボードの設置や, 必要に応じてリハビリスタッフから実施の促しを行い,定期的なカンファレンスを実施した.また家屋訪問前の退院や,介護保険の申請等の遅れから,退院までにフォローできないケースが目立ったため,SWとの情報交換を密にし,介護保険の確認の徹底や,早期からケースに応じた施設等の情報を家族へ提供できるようにした.ADLへの介入では,患者の歩行やADLの変化に応じて担当Nsに報告し,ベッドサイドにADL状況を掲示し,他職種との統一を図った.
【結果と考察】
自宅復帰率,入院期間,転帰先において,どれも有意差を認めなかったが,入院期間は取り組み後も98.1%と維持する傾向にあり,平均入院期間は短縮傾向にあった.これらは取り組みを通して,退院までの流れがスムーズになったことが影響していると考える.今後は外来リハやデイケア,自宅でのサービス利用など,退院後のフォローが充実し,退院後の転倒予防等にも繋がるのではないかと考える.また,ADLへの積極的な介入は能力に応じて必要なときに介助ができるため転倒予防やケースの能力・意欲向上にも繋がっていくのではないかと考える.
【今後の展望】
亜急性期病床は一般病床の一部であるため,連携に対する認識を全スタッフ間で統一することが必要であると考えられる.そのため,今後は亜急性期病床における詳細なADL評価の導入や,転倒率・再入院等の具体的な検討を行い,さらには退院後の他施設とも連携することで,亜急性期病床でのアプローチを見直し,他職種と共に質の向上に繋げていきたい.