九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 233
会議情報

他患が癌患者の心理面に及ぼす影響がリハ効果の促進に繋がった一症例
(作業療法を通しての経過)
*山元 総一郎中野 小織西銘 吉之津田 斉志當眞 亮太安藤 和佳奈湖城 遼子
著者情報
キーワード: 癌患者, 心理面, 対人交流
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】
癌患者の精神機能が他患者との作業療法を通して改善し、それに伴い、身体機能面・ADL面にも大きな効果を認めた症例を経験したので、症例の同意のもと以下に報告する。
【症例紹介】
70歳代女性。診断名肺癌 両側肺転移。病期:_IV_期 未告知 性格:社交的。X年子宮癌発症しope+放射線療法 残存病変なく治癒と評価。X+11年に尿漏れ・全身倦怠感・食思・食欲低下を主訴に当院受診。尿道狭窄症・両側肺転移の診断を受け、D-Jステント留置後入院。その6日後、四肢の筋力低下を主訴にリハ処方される。
【OT初期評価】
全身倦怠感の影響あり、起居・ADL動作において依存的であり介助要。食事はギャッジアップにてどうにか自己摂取可能。精神機能面は表情乏しく、コミュニケーションも消極的。行動範囲:病室内(臥床傾向) カルノフスキーの尺度40点 FIM45点。
【作業療法経過】
第1期:倦怠感の訴え強く、起居・ADL動作では依存的傾向で、リハにも消極的。第2期:第一期でリハが困難であったため、まずは意欲を引き出す事を優先し、症例と昔から友人であるという他患者を紹介。この時初めて笑顔がみられ、会話が弾む。同時期に整容動作促すと「知り合いにも会うしちゃんとしないとね」との発言聞かれる。第3期:第2期で精神機能面に変化が見られた事から友人と同時間帯に共同で行える作業療法を提供した。ACTを媒体としコミュ二ケーション促進を図った。坐位時間90分程度可能。第4期:本人の趣味であるグラウンドゴルフを屋内で実施できるまでに改善。カルノフスキーの尺度80点、FIM104点となった。
【考察】
症例は癌患者特有の全身倦怠感の訴えあり、依存傾向が強かった。他者への依存性増大は生きる意味や目的を見失いやすく、さまざまな精神症状の要因となり得る。それらの精神症状に対応する事は精神症状のみならず、身体症状にもよい影響を与えるとある。知人との再会により精神機能面に変化が見られた事から身体機能面やADL面においても大きな変化を遂げる事が出来たと考える。精神機能面の変化の要因として辛い気持ちなどの感情表出がストレスの解放に繋がる事や人生を振り返り思い出を共有する事が精神的安定に繋がるとされており、友人との関わりが心の支えに繋がったと考える。今回、精神機能面から身体機能面やADL面にも変化を与える事が分かった。今後は患者同士の交流の重要性を模索していき、QOLについても客観的に評価していきたい。
著者関連情報
© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top