2016 年 25 巻 8 号 p. 660-668
初めてけいれん発作を起こした患者では, 頭蓋内病変検索のために画像診断を行うことがてんかん治療ガイドラインで推奨され, 特にMRIは重要である. 実際, けいれん発作は脳腫瘍患者によくみられる症状であり, 髄膜腫で29~60%, 転移性脳腫瘍で20~35%, 髄内腫瘍である神経膠腫においては, 良性で80%以上, 悪性で29~49%に認められると報告されている. 最も頻度が高いのは, glioneural tumorであった. これらは, 腫瘍自体にてんかん原性があると考えられており, 病変の摘出が良好な発作予後に必要である. 一方, 2011年に提唱された皮質異形成の分類で, 腫瘍に合併する1項目が挙げられている (FCD Type IIIb) ように, 腫瘍自体がてんかん原性をもつというよりも, 合併する皮質異形成が要因となることもある. この場合には, 良好な発作予後につながる最適な外科的治療戦略には, 焦点部位の十分な評価が重要となるため, 機能野との関連で治療適応や切除範囲を検討することになる. 外科治療後も, けいれん発作がみられると, 術後の日常生活や治療継続に影響を及ぼす一方で, 発作以外に症状がないような症例では, 術後の生活に影響を与えるような機能障害は避ける必要があり, 機能温存のための工夫が求められる. また, 脳腫瘍症例の抗てんかん薬に関する前向き研究は少なく, 発作のない症例に対する予防的薬物治療に関してもわかっていない.