九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 238
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対側腋窩洗体動作における肩甲骨外転運動
-肩甲骨上腕関節水平屈曲と内旋可動性との関係-
*新垣 太樹比嘉 竜二宮城 健次仲間 栄二目島 直人
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抄録

【はじめに】
有痛性の肩関節疾患において、ほとんどの日常生活動作(以下、ADL)で肩甲上腕関節の可動域が支障のない程度に改善される場合においても、対側腋窩の洗体動作獲得が最後まで難渋する症例を経験した。一般的に対側腋窩へのリーチ動作(以下、リーチ動作)には肩甲上腕関節屈曲・水平屈曲・内旋の動きに、肩甲骨外転が加わる。今回、リーチ動作において肩甲骨外転運動に着目し、最も関与されると思われる水平屈曲・1st.2nd.3rd内旋可動域の計測を行ない運動特徴を検討したので報告する。
【対象と方法】
対象者は肩関節に既往のない健常男性10例(30.2±8.2歳)両側20肩とした。対象者には事前に本研究の目的・方法を説明し了承を得た。あらかじめ肩関節屈伸・外内転・外旋・水平伸展はスクリーニング検査を行い可動域制限がないかを確認し、肩関節水平屈曲・内旋1st.2nd.3rdはゴニオメーターで可動域を計測した。肩甲骨外転の計測値はDevitaの報告に準じて行った。方法は個体間の差を考慮された肩甲骨の移動能力を調査するもので、Th3棘突起より肩峰角までの距離を計測し、その距離を肩甲棘の延長線上にある肩甲骨内側縁から肩峰角までの距離で除した値を計測値としたものである。開始肢位は上肢自然下垂位とし、開始肢位より対側腋窩の肩甲骨下角まで指先が触れるまでリーチした時の肩甲骨外転値を測定した。検討項目はリーチ動作した時の肩甲骨外転運動と肩甲上腕関節可動域として水平屈曲・内旋1st.2nd.3rdの可動域との相関関係とした。
【結果】
肩甲骨外転の平均値は2.1±0.99cmであった。最小0.5cm、最大3.5cmであった。肩甲骨外転と各肩甲上腕関節の相関関係は全てで負の相関関係が認められた(水平屈曲:r=-0.48、内旋1st:r=-0.51、2nd:r=-0.52、3rd:r=-0.75、P<0.05)。
【考察】
今回の調査において、肩甲骨外転値と水平屈曲、内旋1st.2nd.3rdの相関関係はそれぞれに認められた。特に内旋3rdでは強い負の相関が認められ、内旋3rd可動域が減少すると肩甲骨外転の幅が増加する傾向となった。臨床においてリーチ動作を獲得する際に肩甲骨外転運動と、内旋3rdの可動域の関連性を考慮しアプローチを検討していく必要性があると考える。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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