抄録
【目的】
近年、理学療法分野においても、患者立脚型評価法が注目されている。腰痛評価において、従来の治療者評価から、自己記入式患者立脚型の日本整形外科学会腰痛評価質問票(以下、JOABPEQ)を使用した治療評価が徐々に増えてきている。そこで、JOABPEQの疾患特異性尺度としての有用性および、他項目のSF36の下位尺度との関連性について検討した。
【対象及び方法】
書面にて趣旨を説明し同意を得られた当院職員を対象に、腰痛に関する記述式アンケートを実施した。実施総数221名、回収率96,3%。有効回答137名中、腰痛を有する68名、うち男性17名、女性51名、平均年齢29±10歳(20~64歳)であった。JOABPEQ5項目と、SF36の各8項目において相関係数を算出した。統計は、ノンパラメトリック検定のスピアマンの順位相関係数の検定を行った。
【結果】
JOABPEQの1.疼痛関連障害では、SF36の痛みでr=0.29、全体的健康感でr=0.29、活力r=0.3、社会生活機能r=0.32と、やや相関が認められた。2.腰椎機能障害では、痛みr=0.32と、やや相関が認められた。3.歩行機能障害では、身体機能r=0.35、日常役割機能(身体)r=0.39、痛みr=0.36と、やや相関が認められた。4.社会生活障害は、8項目全てと相関が認められ、身体機能r=0.34、日常役割機能(身体)r=0.51、痛みr=0.44、全体的健康感r=0.31、活力r=0.31、社会生活機能r=0.43、日常役割機能(精神)r=0.32、心の健康r=0.36と相関が認められた。5.心理的障害は、8項目全てと相関が認められ、身体機能r=0.26、日常役割機能(身体)r=0.48、痛みr=0.49、全体的健康感r=0.68、活力r=0.67、社会生活機能r=0.57日常役割機能(精神)r=0.48、心の健康r=0.73と相関が認められた。
【考察】
JOABPEQ の各5項目は独立因子である。疼痛関連障害・腰椎機能障害・歩行機能障害の3項目において、相関項目が少ないということは、包括的な健康概念であるSF36ではみることの出来ない、疾患特異的機能障害を評価できるからではないかと考える。またSF36では、人の健康に関するQOLを、身体的な側面と精神的な側面から評価することができるとされている。社会生活障害および心理的障害において、8項目全てと相関があったことから、この双方を評価できるのではないかと考える。
【まとめ】
JOABPEQは、各項目の評価において腰痛の特異的機能評価として評価できる上、QOLをも総括してみることができる評価票であり、理学療法評価にも有用であると考える。