九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 243
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認知機能が低下している患者に対する集団活動の有用性
*平田 奈津美工藤 あずさ満永 晴美橋口 貴大
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抄録

【はじめに】
 当院には整形外科や内科治療を目的に入院する認知症高齢者は少なくない。それらの認知症高齢者は日中臥床していたり、無為に過ごす場面が観察される。山口らは、認知症高齢者が不活動になると、認知症の進行が速まると述べている。そこで、今回認知機能が低下している高齢の入院患者に対し集団活動を行い、その有用性を考察した。
【対象】
 対象はMMSEが23点以下の者とした。集団活動導入群を実施群とし、6名を対象とした(内訳は男性1名、女性5名、平均年齢85.3±4.2歳、主病名は大腿骨頚部骨折4名、脊椎圧迫骨折2名)。実施群の選出は病棟担当の作業療法士(以下OT)で行い、集団活動に拒否がない患者とした。集団活動非実施群(以下非実施群)は5名を対象とした(内訳は女性5名、平均年齢90.7±2.7歳主病名は大腿骨頚部骨折3名、骨盤骨折1名、大腸癌1名)。なお倫理的配慮として本人、ご家族から研究協力の承諾を得た。
【方法】
 実施群に対し1回40分程度の集団活動を週3回、4週間、計12回実施した。活動は病棟ロビーで行い、スタッフはOT4名が交代で2名ずつ入り活動の指導や援助を行った。活動内容は山口の脳活性化リハビリテーションに基づき、見当識入力、計算課題、ゲームを行い、実施群への関わり方として他者との交流を促したり、役割を提供し、計算課題では満点が採れるよう個人の能力に合わせたものを提供した。評価尺度にはMMSE、HDS-R、前頭葉機能検査(以下FAB)、NMスケールを用いた。非実施群にも同様の評価尺度を使用し、実施群と非実施群で集団活動開始前後の相違について効果を判定した。なお、統計処理は対応のあるt検定を用い危険率5%未満を有意とした。
【結果】
 実施群の介入前後の得点では、HDS-R以外の評価尺度で有意な改善を認めた。非実施群では、全ての評価尺度に有意な改善は認めなかった。NMスケールの下位項目について、関心・意欲・交流と見当識の項目得点で実施群のみ有意な改善を認めた。また、集団活動中に患者より「楽しかった」「また次も宜しくお願いします」との発言も聞かれた。
【考察】
 山根らは、集団では、そこに集まる人の相互作用により、二者関係では得られない様々な経験が生まれると述べている。今回、実施群でも活動を媒介とした集団内での相互作用により、他者との交流や意欲向上を引き出すことができたと考える。また、病棟ロビーにて集団活動を行ったことはそこで芽生えた交流や意欲を病棟生活に般化しやすく、より効果的であったのではないかと考える。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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