九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 250
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運動制御障害を伴う腰痛症に対する積極的安定化運動の効果
床反力計と三次元動作解析器を用いて
*荒木 秀明猪田 健太郎武田 雅史太田 陽介廣瀬 泰之赤川 精彦末次 康平山形 卓也
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抄録

【目的】
我々は慢性腰痛に対し独自のフローチャートを用いた腰痛のサフ゛ク゛ルーフ゜分けを行い、ク゛ルーフ゜毎の特異的理学療法の有効性を報告してきている。しかし疼痛により筋スパズムを有する運動制御障害例では脊柱や骨盤帯が不安定であるにも係わらず他動運動テストで疑陰性を呈し、治療に難渋する場合がある。この問題に対して従来の評価に加え荷重伝達機能テストとして提唱されている片脚立位テストと能動的下肢伸展挙上テスト(以下ASLR)を加え、運動制御障害の有無を確認し、早期からレッドコードを用いた積極的な動的安定化運動を行い良好な結果を得ている。今回、運動制御障害を有する腰痛症例に対する積極的な動的安定化運動の効果を動作分析(床反力計と三次元動作解析)と臨床所見から検討したので報告する。
【方法】
対象は著明な神経学的脱落所見を認めず3カ月以上の罹病期間を有する慢性腰痛症例で以下の診断基準に合致した10例である。1_片脚立位支持側の骨盤前傾、2_他動運動テストで過少運動性、3_ASLRテストで陽性。除外診断項目として、明らかな神経学的脱落所見を呈するもの、外科的治療施行後、著明な脊柱および下肢の変形を有する症例とした。開始時、全例に対してZEBRIS社製、超音波式三次元動作解析システムと床反力計PDMを用いて片脚立位時の骨盤位置と重心動揺を測定し、臨床所見として疼痛(visual analogue scale:以下VAS)と体幹前屈角度(finger floor distance:以下FFD)を記録した。対象は無作為に腹横筋と多裂筋再教育指導群(以下指導群)と、レッドコードによる動的安定化運動群(動的群)に分類した。運動直後、開始時と同様に動作解析と重心動揺および臨床所見を測定し、両群間で比較を行った。全例に対して十分な説明を行い、同意を得た。
【結果】
1_VAS:指導群では変化を認められなかったが、動的群では有意(P<0.05)な改善を認めた。2_FFD:指導群では有意な変化は認められなかったが、動的群では有意な(P<0.01)改善を認めた。3_三次元動作解析:指導群では依然、骨盤前傾位を呈しており、治療前と比較して変化は認められなかった。しかし動的群では骨盤は軽度後傾位で固定され、非症状側との左右差は消失していた。4_重心動揺測定:指導群では軽度前方変位で総軌跡長は不変であったが、動的群では非症状側とほぼ同様に後方重心で総軌跡長も有意(P<0.01)短縮し、安定化を示唆した。
【考察】
今回、Hodgesらが提唱する深層筋を活性化させる指導に加え、McGillらの推奨する共同収縮運動を後部靭帯系理論に基づき後部斜方向と前部斜方向筋群を急性期から積極的に行った。方法は疼痛を誘発しない抵抗量の微調整が可能で深層筋を活性化させる不安定性を提供できるレッドコードを用いた動的安定化運動とした。結果、治療直後から疼痛や可動域の臨床的所見と重心動揺と骨盤帯の動作解析において良好な結果が得られた。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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