九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 257
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特別支援学校における理学療法士の役割
文部科学省委託・長崎県教育委員会指定研究よりの一考察
*大山 智恵美
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抄録

【はじめに】
長崎県の特別支援学校では重複障害児学級に在籍する児童生徒が70_%_を超える(平成19年度)など障がいが重度重複化・多様化している。こうした現状から特別支援教育の充実には高度な専門的知識・技術が必要で、PT、OT、ST等の外部専門家を活用し指導方法の改善や教員の資質向上を図ることが必要であるとして、長崎県教育委員会は文部科学省委託事業「外部専門家を活用した指導方法の改善に関する実践研究」(以下研究事業)を指定研究とした。演者はこの研究事業に委員として委託を受け、学校の授業に介入する機会をいただいた。今回はその活動内容を紹介するとともにこの事業から見える特別支援学校(肢体不自由)における理学療法士の役割について考察したい。
【介入の実際】
研究事業は平成20年4月から平成22年2月の約2年間、長崎県立A特別支援学校にて実施された。演者が実際に学校に出向き児童生徒を通して指導助言を行ったのは長期休暇を除く期間に月に2回(計18回)、1回につき4時間4~7名の児童生徒の担任を対象に日頃疑問に思っていること、行っている手立て等について指導助言を行った。目標設定には児童生徒の生活年齢を考慮し卒業後も見据えた視点が必要であること、運動機能のみならずコミュニケーション能力や認知などとの関連性も見ていく必要があること、環境設定が重要であること、自立活動のみならず日常の関わり方こそが重要であるなどの説明も加えるように心がけた。そのやりとりには学校が作成したパワーアップシートを活用し、指導助言内容を教員がどう捉えたか、PTとして的確に伝えることができたかを確認しながら進めた。また長期休暇中にはPTの指導助言内容やグループごとのまとめを教員が発表するグループ総括研究会や全職員を対象とした全体研修会が行われ(計5回)、助言等で分からなかったこと、もっと深く知りたいことなど教員からの要望に応じて講義も行った。また児童生徒が利用している機関の療法士と情報交換を行い学校での様子を伝えたり、その場ですぐに解決できないような課題等について経過観察を依頼したりした。2年間の研究事業終了時の教員の感想にはPTの介入により個々の児童生徒に応じた有効な指導へつながった、児童生徒が利用している機関の療法士と共通言語で話ができるようになったなどがあった。
【考察】
事業の目的である教員の専門性を高めるために特別支援学校に介入するPTは、療法士からの一方的な指導助言にならないように留意することが必要であると考える。また特別支援学校だからこそできることと個別理学療法だからこそできることの連携をはかるべく、児童生徒が利用している機関の療法士とのパイプ役になることが重要と思われた。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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