九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 294
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変形性股関節症に対する運動療法介入後の即事効果
*奥村 晃司羽田 清貴加藤 浩永芳 郁文川嶌 眞人
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抄録
【目的】
変形性股関節症(変股症)患者の訴える愁訴は,病期進行の程度に関わらず歩行に関連する項目が臨床上少なくはない.しかしながら歩容改善に対する運動療法は,股関節外転筋力強化のみでは十分な効果が得られにくく効果的な運動療法は未だ確立されていない.我々は,変股症患者の治療展開において姿勢や動作に着目した運動療法を実践し愁訴改善に取り組んでいる.歩容改善に対しての運動療法実践では歩行時の衝撃吸収期に着目し,股関節周囲の機能改善に加え骨盤,体幹機能の機能的連結改善による多様な運動パターンと動作のバリエーションの獲得を重視している. 今回,変股症患者に対し運動療法介入による即時効果を歩行時の初期接地(Initial Contact IC)期における股関節外転筋群の筋活動に着目し,運動療法介入前後で比較検討したので報告する.
【方法】
対象は,当院にて保存療法中の初期変股症患者1名である.本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に沿って実施し,当院の倫理審査委員会の承認を得た上で実施した.歩行時のIC期における筋活動は中殿筋,大腿筋膜張筋の計2筋を被検筋とし,運動療法介入前後の表面筋電図を測定.歩行条件は裸足10m自由歩行を5施行行い,歩き始めから3歩目のデータを採用した.得られたデータより5歩行周期を算出,加算した値から相対的積分値(%IEMG)の0~10%の筋活動を比較対象とした.裸足10m自由歩行は,被検筋の筋活動を無線式筋電図EMGマスターKm-818T(メディアエリアサポート社製)にてサンプリング周波数1kHzで測定.また踵部に貼付した圧センサの信号により,ICを同定した.運動療法介入は,徒手にて股関節周囲のリラクセーションを実施し,体幹・骨盤・股関節の機能的連結改善を目的とした運動療法を20分間実施した.
【結果】
運動療法介入前後の各%IEMG比較は,中殿筋は介入前83.1%から介入後60.4%と介入後に減少が認められた.大腿筋膜張筋の%IEMGでは,介入前66.6%から介入後55.0%と介入後に減少が認められ,初期接地である0~10%の%IEMGの筋活動が被検筋2筋ともに運動療法介入後に値が減少した.
【考察】
初期変股症患者の症状の特徴としては股関節周囲の重だるさや動きにくさや疼痛である.またこれらの症状より股関節の機能障害を引き起こし歩行動作,歩容に問題が生じやすい時期となる.変股症患者では遊脚相の持続的な筋活動が立脚相にも続き,外転筋収縮リズム破状が生じていると報告されおり,運動療法介入後の%IEMGが運動療法介入前よりも減少が認められた結果は運動療法の介入が歩行動作,歩容改善に対する効果的な一手段である可能性が示唆される.
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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