九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 295
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THA後の靴下着脱動作獲得に影響する股関節ROMの検討
*二木 亮高山 正伸阿部 千穂子占部 貴紀緒方 健一
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抄録

【目的】
 THA後の靴下着脱動作獲得は、患者のADLやQOLの向上において必要不可欠である。靴下着脱動作の練習方法は術中の脱臼肢位により異なってくるが、近年ではOscillation angleの拡大によりTHA後の安全域増大が期待できるため、当院では積極的に股関節開排屈曲動作(以下、外旋型動作)で指導を行っている。その結果、動作獲得率が93.3%で外旋型動作獲得には単独股関節ROMに比べて複合股関節ROMの方がより関連性が高いと第45回日本理学療法学術大会にて報告した。
 そこで本研究では、靴下着脱動作を外旋型動作にて獲得する際に影響する股関節ROMの検討を行った。
【対象と方法】
 対象は2009年5月から2010年3月までに当院にて施行したTHA症例のうち重度のRAや認知症のある症例を除外した51症例52股(平均年齢66.6±9.4歳)とした。対象者には口頭および紙面にて本研究の内容を伝え、同意を得た。術前より外旋型動作での指導を行い術後早期より練習を開始、背もたれなしでの着脱可能となる毎にその時点での股関節ROMを計測した。またカップの設置角度は術当日のX線前後画像より計測した。
 統計学的検定は1)獲得群股関節ROMと未獲得群股関節ROMの比較にはMann‐WhitneyのU検定を、2)獲得群において外旋型動作獲得に影響する股関節ROMの検討にはロジスティック回帰分析を用いた。ともに有意水準を5%未満(p<0.05)とした。
【結果】
 1)外旋型動作の獲得率は90.0%で、獲得群と未獲得の比較では外転ROM以外の屈曲、外旋、屈曲+外旋、屈曲+外転、外転+外旋、屈曲+外転+外旋ROMに有意な差を認めた。2)外旋型動作獲得に対し股関節屈曲+外旋ROMが最も影響する因子であった。股関節屈曲+外旋ROM110°以上のすべての症例が動作を獲得した。対象者のカップの設置角度は外方開角44.1±6.9°、前方開角12.1±5.6°で、動作中に脱臼やインピンジメントした感覚を訴えた症例はいなかった。
【考察】
 今回の研究より、2群間比較では有意な差が認められた股関節屈曲ROMと外旋ROMは、外旋型動作獲得の影響因子としてそれぞれの単独ROMでは影響が認められず、股関節屈曲+外旋ROMの複合ROMとして影響することが示唆された。
 靴下着脱動作の獲得には股関節ROMのほかに、リーチ動作や脊柱・隣接関節の可動性や年齢などの関連が報告されている。しかし今回の研究では股関節屈曲+外旋ROM110°以上獲得したすべての症例が動作獲得していることから、股関節屈曲+外旋ROMが少なからず外旋型動作獲得に関与していることが分かった。
 以上のことから、THA後は極端なカップアライメントの設置がない限り早期から股関節屈曲+外旋ROMの獲得を目指すことで、靴下着脱動作を外旋型動作で獲得が可能であると考える。

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