九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 30
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母指対立再建術後の早期運動療法における長期成績
*田崎 和幸
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抄録

【はじめに】
第25回本学会において母指対立再建術後に早期運動療法を行い、良好な成績を得た一症例について報告した。その後も症例を積み重ねており、今回、その長期成績を調査する機会を得たので、その結果を報告する。
【対象】
2003~2007年の5年間に環指の浅指屈筋が力源で、ギオン管をpulleyとして利用した母指対立再建術後に早期運動療法を行った42例47手のうち有効回答と同意を得た低位正中神経麻痺例24例27手を対象とした。内訳は、男6例7手、女18例20手、年齢は53~88歳(平均69.5歳)であり、全例右利きで、再建側は右17手、左10手であった。
【方法】
Kapandji test(母指対立)、握力、指腹摘み力、側腹摘み力を調査し術前と比較した。またADLにおいては、ボタン・書字・爪切り・箸・蛇口の開閉・タオル絞り・洗顔動作の独自の7項目を容易3点、やや困難2点、困難1点、不可能0点の4段階で評価した。
【結果】
Kapandji testは術前2から術後5~10(平均8.9)、同様に、握力は0~39kg(平均16.7kg)から8~38kg(平均18.9kg)、指腹摘み力は0~6.6kg(平均2.7kg)から2.6~7.2kg(平均4.5kg)、側腹摘み力は0.9~8.8kg(平均4.6kg)から2~10.6kg(平均6.7kg)と改善していた。7項目のADL評価では、11~21点(平均19.5点)であった。また、早期運動療法による腱縫合部の断裂例および環指PIP関節の過伸展変形例はなかったが、2手の環指PIP関節に不可逆的な屈曲拘縮が生じ、拘縮解離術を施行した。
【考察】
腱移行術後のセラピィにおいては、腱縫合部中心に必発する周囲組織との癒着を可能な限り改善させるだけでなく、switchingを意識させる筋再教育が重要となる。一旦、腱縫合部の癒着が生じると筋再教育訓練である移行筋の収縮と弛緩が目的とする動作として現れにくいため、switchingへの認識は獲得されにくくなる。すなわち、switchingを認識させるには、腱縫合部の癒着が生じていない可及的早期に安全に筋再教育訓練を行うことが望ましいといえる。況して移行筋である環指の浅指屈筋は、代償する母指対立筋および短母指外転筋との共動筋ではないため、早期にswitchingを認識させることが重要と考えられる。今回の結果からは良好な摘み形態・力が獲得でき、独自のADL評価においても平均19.5点/21点であり、早期運動療法によって良好なswitchingによるuseful handが獲得できたと考えられた。一方、donor siteの機能損失による障害は、一般的に環指PIP関節の過伸展変形と握力低下が謳われているが、今回の結果からは両者とも問題なかった。しかし、2手の環指PIP関節に不可逆的な屈曲拘縮が生じており、この予防が今後の課題である。

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